■ 1-3 起業の方向性を考える |
これから起業をしたい人、起業をしたけれども経営がなかなか軌道に乗らない人、それが一般企業であっても、経営コンサルタントなど士業であっても、悩みは類似していますし、解決策も類似して、応用が利きます。
起業すると言っても、何の目的も持たずに起業することが目的という人は少ないでしょう。たとえ、その様な人がいたとして、よほどの条件がそぐわないとその様な人は途中で挫折してしまうのではないでしょうか。
起業をして、途中で挫折をしない方法を考えてゆきましょう。
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■■ 起業の方向性のありかた 17-1309-01 |
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人が旅をするときには、何の目的も持たずに、ふらりと旅立つこともあるかもしれません。しかし、起業を決意するには、それなりの理由があると思います。思いつき起業をして、リスクを冒すことに生きがいを感じる人は、大きな成功をするかもしれませんが、私はあまりお勧めしたくないですね。
起業の理由は、様々でしょうが、大きくいくつかのパターンに分類できますので、これからその方向で考えてみたいと思います。
多くの人が、起業を考えるときに、何か目的を持っているでしょう。
◇ もっとお金持ちになりたい
◇ 自分のやりたいことをやりたい
◇ 老後を有益に過ごしたい
このような単純な理由というより、年齢や、置かれている状況によって、人様々でしょう。
起業するに当たり、何を目的とするか、どのような事業を行うか、どのようなドメインで行うか、このように、それを行うに当たっての基本的な考え方を自分で整理し、その上で方向性を見極める必要があります。
その上で、その目的が社会的な意義を持っているのか、どのような意義があるのか、理想論に走りすぎず、一方で経済的な意義も含めて考えるべきでしょう。社会的な意義も経済的な意義も、起業の方向性を考える上において両輪と言えます。常に相反するというわけではなく、むしろ両立する道を選ぶのが一般的でしょう。そうでありませんと、その事業を継続することは困難でしょう。
根幹がキチンとしていませんと、風評の影響を受けたときとか、想定外のアクシデントに遭遇したりしたときに、ほとんどの人が慌ててしまうでしょう。それどころか、起業したての頃というのは、風が吹くだけで倒れかねません。
自分の独りよがりの方向性では成功は難しいでしょう。第三者が見て、何か共感するような方向性ですと、成功率は高まります。第三者の共感を呼ぶことになれば、協力をしてくれる人も出てくるでしょうし、中には支援までしてくれる人もいるかもしれません。独りよがりの方向性や計画では第三者の共感を得ることは難しいでしょう。
■ 経営士・コンサルタントにおける方向性のあり方
経営コンサルタントや経営士・中小企業診断士においても、同じことが言えるのではないでしょうか。
経営士・コンサルタントとしての信念がない人は信用されないでしょう。信念に、起業時に燃え、希望を持っている時の考え方や方向性が活かされていませんと、その信念は薄っぺらな、絵に描いた餅にすぎません。
他のコンサルタントが言っているようなことを信念として掲げても共感を得ることは困難でしょう。とりわけ経営士・コンサルタントというのは、目には見えない知的サービスを提供するのですから、どのような経営士・コンサルタントなのかを示せなくては、共感を得られず、クライアント・顧問先を獲得するのも困難でしょう。
起業前や起業直後の経営士・コンサルタントの心構えについては、経営コンサルタントになろうとする人の60%以上が訪問すると言います、 関連参考情報 ←クリック
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■■ 4つのアプローチ視点 18-1310-02 |
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ここでは、次の4つの視点からのアプローチについて考えてみましょう。
◇ 自分が持っている強みから
◇ 自分のやりたいことから
◇ 自分のライフスタイルから
◇ 社会の変化から
これらの4つの視点から事業のアイデアを整理し、事業の方向性を明らかにすると比較的アプローチしやすいでしょう。
前者の経験をベースにする方法から見てみましょう。自分自身が培ってきた技術やノウハウ、また自がおかれている生活環境などから、見出されることが多々あります。自分が体験してきたり、身の回りを見渡すことにより思いついたりできますので、比較的容易に発想できます。
上記の4項の3つめまでがこれに相当します。それに対して、社会の変化を読んでのアプローチという方法が4つ目です。
世の中にはトレンドといわれるような大きな流れがあります。その流れの中にある隙間に新たなビジネスチャンスを見つけ出しやすい、ニッチビジネスなどがその典型でしょう。いきなり新規事業というと難しいでしょうから、既存製品の改良などに着眼したビジネスを機転にするアプローチから始めるのも良いかもしれません。
まったく新しいビジネスを創出する場合には、新規性とともに「なぜ今までなかったのか?」という視点も必要です。新規性はあるが、ビジネスとして経済的に成立しないために、今まで誰も事業展開をしなかったケースもあります。大企業では、その様なビジネスを検討俎上に載せていても、日常業務に追われがちな中小企業では気がつかないこともあります。
逆に、飲食店の展開のように、新旧織り交ぜ、かなりの数がひしめき合っているビジネスの場合でも、新しいアイデアで展開により、流行るお店となる可能性もあります。
■ 経営士・コンサルタントのアプローチ
一般論については、上記の4項をベースにするのがとりつきやすいアプローチ法でしょう。では、経営士・コンサルタントという特殊な業界ではどうでしょうか。
経営士・コンサルタントの起業の方向性は、ニーズ面から見る方法とシーズ面から診る方法が考えられます。
例えば、環境問題についての関心はグローバルな視点で見ても高いと言えます。一昔前であれば、IT/ICTというトレンドがありました。上述4つのアプローチ法を利用して、自分がトレンドである市場ニーズ面で、専門分野を決めて、自分の方向性を決めるのも良いでしょう。
ただし、この場合にはすでに先輩達がその分野で活躍していて、新規参入が難しと言うこともあります。経営コンサルタントも、スタート時点ではニッチ市場、先輩達があまり手を付けていないような分野を見出すことにより比較的スムーズに起業できることがあります。
後者のシーズメンからのアプローチは、自分の体験をベースにすることが基本です。サラリーマン寺大に培った知識や技能・技術・ノウハウなどをベースにすれば、自分でも自信を持ってスタートできます。
一方で、自己満足に陥ったり、大企業経験者に多いのですが、中小企業の特質を知らず、大企業的な手法を押しつけて失敗したりすることがあります。
いずれのアプローチ法にしても、どうするのが良いのか見極めがうまくできた人が比較的スムーズにテイクオフできのではないでしょうか。
関連参考資料 ←クリック
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■■ 自分が持っている強みからのアプローチ 19-1311-03 |
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ここは、この4つのアプローチ法の中から、最初の自分が持っている強みから取り組んでみましょう。自分が経験してきていますし、自分自身のことですので比較的アプローチは容易かもしれません。
一方で、自分自身のことですから、自分が一番よく知っていると思い込んでしまいますと、独断的な偏見に陥ってしまい兼ねません。具体的な方法は、下記の書籍を利用しますと比較的容易にアプローチできるかもしれません。
クリティカル・シンキングがよ~くわかる本
今井信行著 秀和システム 1400円+税
第二章
「クリティカル・シンキングでキャリアプラニング」
■ 自分の「強み」を見る視点
起業家をめざす人自身が持っている「強み」からビジネスのネタを探してみましょう。
その際に、J-NET21にあります下記を参考にされるとよろしいでしょう。
◇ これまで培ってきた業務における実績や経験
◇ 製品やサービスにかかわる技術やノウハウ
◇ 資格や免許などの顕在化している専門能力
◇ 独創的なアイデア
◇ 豊富な個人資金
◇ 広範な人的ネットワーク
◇ プロに匹敵するレベルの趣味
◇ 体力、若さ、精神力、行動力
これらの強みを活かすことから、製品やサービスをイメージし、それに対しどのような市場や顧客が見込まれるのかを構想していきます。
経営士・コンサルタントの場合にもこれらの項目が当てはまるでしょう。
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■■ 自分のやりたいことからのアプローチ 20-1312-04 |
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起業家としての自身がやりたいと思うことから、具体的なビジネスに展開するネタを探す方法です。
その際に、J-NET21にあります下記を参考にされるとよろしいでしょう。
◇ やりたいことは何か
◇ 好きなこと(モノ)は何か
◇ 何をしている時が楽しいか
◇ 成果が上がって、達成感が得られたことは何か
このようなことを明らかにしていきますと、その延長線上に新事業のアイデアが浮かんでくるかもしれません。
自分が好きなことですので、これまでも比較的深い知識を持っていたり、他の人があまり経験したことがなかったりということを体験してきていることが多いです。
例えば、趣味のそば打ちをしているときに、心不乱となり、それがストレス解消となっていた人が、これまで自分が不満に思っていた既存のそば屋とはひと味違ったお店を持つことになるかもしれません。
一方で、好きなことと言うのは自己流でやってきていることが多いですので、独善的にならないように自分自身のあり方を常にチェックすることが必要です。
■ 経営士・コンサルタントとしてやりたいこと
新規事業の方向性を、自分のやりたいことからのアプローチ法について考えて来ましたが、これは経営士・コンサルタントとしても共通しています。共通していると言うより、経営士・コンサルタントを始める人の多くが、自分の夢を実現したいという強い思いから方向性を決めることが多いのです。
例えばサラリーマン時代に、営業畑が長い人が、「会社の方針で自分がやりたいようにできなかったことなどを実現したい」という思いを強く持っていたとします。自分が築き上げたノウハウは、サラリーマン時代にはあまり他の人には話宅内人が多いでしょう。
ところが、それが経営士・コンサルタントの起業家としてのビジネスとなりますと、それを多くの人に伝承したいという気持ちから、それを自分のビジネスの方向性として根付かせるというやり方が考えられます。
自分の経験が、必ずしも経営士・コンサルタントとしてそのまま活かせるとは限りません。実際に起業現場の状況に応じてフレキシブルに対応できるスキルとそれができる柔軟な思考方法が必要です。
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■■ 自分のライフスタイルからのアプローチ 21-1401-05 |
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これから起業しようといういうときに、自分自身を含めた家族のライフスタイルからビジネスのネタを探すという方法があります。
その際に、J-NET21にあります下記を参考にされるとよろしいでしょう。
◇ 家事(料理、清掃、洗濯など)が得意
◇ 子供(育児、教育)が好き
◇ 介護の経験がある
◇ ペットが好きで、飼った経験がある
◇ 車(ドライブ)が好きで、運転に自信がある
◇ 旅行が好きで、全国各地、世界各国への旅行経験を持つ
◇ コンピュータが得意で、インターネットなどを熟知している
◇ 外国語が得意で、外国人の友人が多い
家族を含めた自分のライフスタイルを書き出してみることから始めてはどうでしょうか。ワークスタイルとライフスタイルを融合することで、思わぬ事業の可能性が広がるかもしれません。
ライフスタイルの分析に当たって、下記の書籍を参照されるのも良いでしょう。
クリティカル・シンキングのポイントがわかる本
今井信行著 秀和システム 700円+税
第四章
「一年の計をクリティカル・シンキングで取り組む」
■ ライフスタイルを基にしたコンサルティング
経営士・コンサルタントとして、自分の売り物を何にするか、これを「経営コンサルタントの商品」といっていますが、自分の商品を何にするのかを、自分のライフスタイルから考えてみるのも、一つの方法ではないでしょうか。
例えば、東京のH先生は、もともとはマーケティングが専門でした。ところが、自分が両親の介護経験から、介護に関して非常に関心を持っていました。当時、介護保険の導入が取りだたされていた時期で、マスコミでも介護保険で持ちきりでした。
H先生は、介護に関する書籍を読みあさっている内に、介護保険に関する書籍のないことに気づきました。そこで、ネットを通じて資料を集めたのです。資料といっても当時の厚生省などが出している情報以外はあまり集まりませんでした。
集めた資料をもとに、取り立て手当もあるわけではないのですが、資料整理とともに原稿を書き始めました。その様な折に、介護に関する雑誌が目に入り、早速その原稿を出版社に持ち込みました。
出版社側も、介護保険に関して原稿を書ける人を探していたときですので、渡りに船、すぐに連載が決まりました。また、介護保険に関するデータブックの出版も決まりました。いつしか、都道府県が介護保険制度作りの支援依頼も来るようになり、今では介護ビジネス専門の経営コンサルタントといっても過言でないほど、その分野では売れっ子となっています。
自分が歩んできた道や自分の日常生活の中に、自分自身の活かし方を見出した例ですが、皆さんも、ご自身のライフスタイルをもとに考えてみてはどうでしょうか。
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■■ 社会の変化からのアプローチ 22-1402-06 |
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激動に時代などといいますと、ビジネスに失敗する話が多いのですが、一方で成功する人もいます。「世の中が変化をしているときは、ビジネスチャンスが生まれやすい」と考えています。
社会の変化が思わぬビジネスチャンスを生み出すことがあります。これから有望となるビジネスは何か、将来はやりそうなビジネスは何か、という視点で自分が興味あるビジネス分野から整理しますと、自分なりの道が拓けてきます
ビジネスに栄枯盛衰があります。事業ライフサイクルの各過程で事業の方向性を探ってみますと、自分の進むべき道が見えてくるかもしれません。
■ いろいろな社会の変化から見る
J-NET21に社会の変化の分類情報が提供されています。それをもとに考えてみましょう。
◆ 未知ビジネス
一部の先見性のある人、特殊な体験をしてきている人、等々、凡人とは異なる視点や体験を持った人が、時代の趨勢をいち早く掴んでいるような、現存しない未知のビジネスを考案できると良いですね。いわゆる「先駆ビジネス」「フロンティアビジネス」といわれる分野です。
自分自身で独創的な発想を活かし、これまでにないビジネスを開発するのですから、何が成功要因となるかもわかりません。逆に先駆者の難しさは、例えば顧客の啓蒙などから始めなければならないかもしれません。
例えばiPadの開発は、パソコンの世界においては、始めは「使いづらい」という非難にも近い意見が大勢を占めていました。今日では、タブレット端末やスマートフォンとして不可欠な存在となっています。
◆ 有望ビジネス
未知ビジネスの中から将来有望なビジネスの芽がでてきますと、いわゆる二番手商法といわれる人達が、手を付け始めます。しかし、事業化が進んでいないことも多く、まだまだ可能性は未知なものです。
有望ビジネスと確信できたら、早期に事業を立ち上げ、ライバルが出てこないあるいは育っていない時期に、先駆者利益を確保することとブランド戦略がポイントです。
◆ 成長ビジネス
有望ビジネスに取り組む企業の中から、成長企業がでてきますと、そのビジネスも、勢いのある成長ビジネスとなります。成長過程にあるビジネスには、同業や類似業者や業界から新規参入も増え、成長もすさましいが、競争も激化してきます。
競合が増えてきたら、ライバルに負けない商品・サービスが必要です。差異化(差別化)戦略の重要性が高く、ライバルとの違いが明確な、特徴的な商品・サービスを提供することがポイントです。また、ライバルとの競争から利益率が低下してきますので、以下に利益額を確保しながら、経営を見ていかなければならない時期です。
この時期に新規参入するのは、よほど特徴有る商品・サービス提供ができませんと、既存企業が改良商品を出してきたりして、それに太刀打ちができず、参入が遅すぎるといえることが多いでしょう。
◆ 成熟ビジネス
急激に伸びてきた業界も、やがては成熟期を迎えます。成熟期には市場の成長が停滞したり、ストップしたりして、過当競争時代を迎えることになります。次第に弱小企業が脱落し、寡占化することもしばしばあります。
例えば運送業界は、過当競争から、大手といえども経営が苦しくなってきます。かつて一般運送業を行っていたヤマト運輸が、宅配便という新しいサービスを開拓したように、大手術が必要となります。
これができませんと、白物家電を中心としていたサンヨーのように、日本企業に吸収され、一部はハイアールなど海外企業に売却され、企業もそのブランドも世の中から消えてしまうこともあります。
飽和状態の市場の中で、ニッチビジネスを求めたり、革新的なビジネス転換をしなかったりしませんと、収益性の低さに繋がってしまいます。
◆ 衰退ビジネス
少子化で子供ビジネス市場は全体的に縮小しています。衰退企業も後を絶たず、企業は存続することすら難しくなります。衰退してきた市場を組成させるような斬新なアイディアで転身するか、廃業に追い込まれるかの時代です。
例えば保育園や幼稚園は、まだ不足状態ですが、市場が縮小することは必定です。このような状況の中で、駅前保育所で成功している企業が結構あります。子供の送迎を、通勤の行き帰りにできるという便利さを前面に出したサービスです。
ユニークなアイディアがあれば、この時期でも新規参入は可能ですが、そのアイディアがいつまで続くかどうかは、常に意識しないとライバルに駆逐されてしまうかもしれません。
撤退戦略の難しさは、むかしから経営者だけではなく、経営士・コンサルタントも悩まされる分野です。
■ 社会の変化と経営コンサルティング業
私事で恐縮ですが、経営コンサルティング業に1970年代から携わってきて、永年経営士・コンサルタントとしてやってきました。クライアントの多くが製造業、その中でも生産財を中心とした企業への支援をやってきました。
この体験の中から、企業がステディに成長し、存続できるためには「守りと攻め」をキチンと行うことであることを学んできました。
「守り」の部分では「管理とは暖かいものである」という考え方のもとに、暖かい管理の定着を行ってきました。「攻め」の部分では、「新規ビジネスへの取り組み」をメインテーマに行ってきました。
中小企業を中心に支援してきましたが、このような原則的なことでありながら、大企業でも通用しました。
経営コンサルタントに成りたての頃から「あたり前のことがあたり前にできる企業作り」を標榜し、守りと攻めをベースにしたコンサルティングの方向性は間違えていなかったと自負しています。これは、私に先見性があったのでも、能力が高かったからでもなく、よい人に恵まれた、運の良さがあったればこそと考えています。
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