これからの人材育成を考える 経営コンサルタント 阿部 宇豆夫 氏 |
阿部先生は、永年大手企業で研修企画などの業務に携わって
来られました。そこから学んだ社員研修のノウハウをもとに、
営業部門の研修を効果的に実施するようコンサルティング活動
をしております。著書として「営業マン教育の進め方」(かんき
出版)があり、その他多数の論文や講演活動があります。
1,人材育成の視点
私は人材育成の仕事に携わり、様々な企業の人材育成を見てきたが、計画的に目標を持って、人材育成に取り組んでいる企業は非常に少くない。
経営計画や新人募集用のパンフレットに、我が社は人材育成に積極的に取り組む云々、と書いてある例は、よく見かける。そこで、実際にどういうことをやってますか、と尋ねると、社員研修制度や自己啓発制度の説明をしてくれるが、そこには、理念や目標、計画性がほとんど感じられない。この様なことでは、有為な人材が育つ訳がない。
これからの人材育成は、目的意識を持って、計画的に、体系的に、幅広い視点から人材育成に取り組まなくてはならない。
人材育成というと社員教育を思い浮かべるかもしれないが、教育だけでは人は育たない。
人材が育つには、次の要素が必要になってくる。
1)人材育成の理念と長期的視点に立った育成計画、
2)やる気の出る人事諸制度
3)効果的な社員教育システム
4)前向きな職場風土
5)効率的な仕事の仕組み
これらの要素がうまくかみ合ってこそ、人が育っていくのである。
ここでは、社員教育システムと職場風土の2点に絞って、述べてみたいと思う。
2,今の若手社員のビジネス能力
ビジネスの現場で必要となる能力は、問題発見・解決能力、実務実践能力、対人関係能力がまず上げられる。特に、この中でこれから求められる能力は、問題発見・解決能力である。
しかし、残念なことに、今の20代の若手ビジネスマンに最も欠けているのがこの能力である。事細かに指示されたことは何とかこなせるのだが、自ら考え、工夫して仕事をこなしていくという人が、昔に比べ著しく少なくなっている。
よく、どの組織でも2割は優秀、6割は普通、残り2割はダメ社員と言われている。しかし、この割合のそれぞれのレベルを昔と比較すると、かなり内容が違ってきている。2割の優秀な人たちは、むしろ昔に比べレベルが上がっており、割合も若干増えている。
問題なのは、6割の普通の人たちである。ここの層は、明らかに昔よりレベルダウンしてしまっている。と言うことは、「そこそこ出来るやつ」が少なくなっていることである。普通が少なくなり、より優秀な方向とダメな方向へ2極化が進んでいる。
大学でもこの傾向は顕著で、やる気のあるやつはどんどん伸びて、やる気のないやつはとことんさぼるという傾向になっている。かって日本は、良質な中間層に支えられていたことを考えると、この現状はこれからの懸念材料の1つとなろう。
とはいえ私たちは、この現状をふまえ21世紀を担う若手社員を育成して行かなくてはならない。
そこでポイントになるのは、まずレベルダウンした普通の社員をどう底上げしていくかである。
又、昔のように先輩社員を見て、そこから自ら学び取れ、という育成方法はもはや通用しない。きめ細かい社員教育が必要となってくる。
さらに、これからますます必要となる問題発見・解決能力をどう高めていくかが課題となろう。
<続く>