|
|||||||||
管理職編 |
|||||||||
「あたりまえ経営のきょうか書」は、「時代即応企業創りを目指して企業体質”強化”する”教科書”」として、経営コンサルタント歴40年余の実体験から、そのノウハウをご紹介いたします。 企業経営者や管理職だけではなく、経営コンサルタントや士業の先生方にも参考となると信じています。 |
|||||||||
“真”のプロが実践している発想法と行動術
「あたりまえ経営のきょうか書」
管理職編
|
|||||||||
■ 2 プロの管理職は、このように発想・判断・行動する 経営コンサルタントという仕事柄、しばしば管理職研修も実施してきました。その時に、必ずといって問うことは、「管理とは何でしょうか?」ということです。 管理職の皆さんは、よく勉強していて、私より立派な回答が返ってきます。 「では、それをどの様に実務に活かしていらっしゃいますか」と問いますと、期待するような回答が返ってきません。 難しいことを勉強しすぎているのではないでしょうか。知識と実務が乖離していますと、せっかくの知識が知恵として活かせません。管理職として、「あたりまえ」なことが、実務で行われているのかどうか、謙虚に自分自身を見ることも大切なのではないでしょうか。 ここでは、管理職なら誰もが知っているようなことを整理してみました。知識としてはご存知のことでしょうが、それを実務に活かすにはどうしたらよいのかを考えてくださる契機となると幸いです。 |
|||||||||
■ 2-2 プロの管理職はリーダーシップを発揮する
■2-20 【リーダーシップ】 ビジネスパーソンにとって不可欠なリーダーシップ
人類の原始社会では、皆がお互いが助けあっていて、富や権利が平等でした。しかし、人口が増えるにつれ、集団同士の利害が反するようになり、社会生活が変化して来ました。リーダーの出現です。
今日では、ICTを中心とした技術変化から、経営環境が大きく変化して来ているだけではなく、IoTの浸透に伴い、その変化が、これまで体験してことのないスピードで起こっています。
その変化が、国や地域といった境界線を超えて、ヒト・モノ・カネ・情報など、経営資源が流動化し、グローバル化によって、さらに急速に、広大に、劇的に進展し続けています。
「国際」というのは境界線がありますが、「グローバル」というのは、壁が取り払われた状態です。これまでは同質でありましたが、いまや、異なった文化や言語、人種、慣習などが、一緒くたになっているのです。
その様な状態では、一人一人が自分の特質を活かせ、それを束ねる、組織活動ができるリーダーシップが不可欠な時代なのです。
ビジネスの世界だけではなく、日常生活におきましても「リーダーシップ」の存在なしには暮らしていけないといっても過言ではありません。リーダーシップの有無や質が、組織としての力の差として現れてきます。
では、リーダーシップの質というのは、どこに起因しているのでしょうか。
古典的なリーダーシップ論では、リーダーシップとは先天的な能力・特性であると考えられていました。
長年、経営コンサルタントという業務に携わってきましたが、リーダーシップのある人の行動からコンピテンシーという視点で、その質の違いを生む要因を見出せていません。複数の要因のいずれかに属することはありましても、全てのリーダーシップのある人全てに共通している因子があるとはいえません。リーダーシップの取り方は、人によって結構バラバラなのです。
裏を返しますと、状況に応じて臨機応変に対応できる人が、リーダーシップのある人といえるのかもしれません。
これがリーダーシップの取り方やそれを身に付けたいという方法論を難しくしているように思えます。ここでは、ビジネスの世界を対象に考えてゆきます。
リーダーシップとは「指導力」とか「統率力」と訳されます。与えられた業務を、できる限り少ない経営資源で、与件を満たす最大の成果物を得られるように個人やチーム、組織に対して行動を促す力、という仮説で話しを進めてまいります。
では、P.F..ドラッカーは、リーダーシップについて、どのように説明しているでしょうか。
ドラッカーは、リーダーシップというのは生まれ持って与えられた天分ではなく、後天的に備わるものであるという見方をしています。そして、「仕事・責任・信頼」という言葉を使って定義づけています。
リーダーシップについて、ドラッカーの考え方の一つは、「リーダーシップは仕事である」ということです。組織が目指すべき目標を実現のために、その方策に優先順位をつけ、その実施のための「ものさし」を明確にし、目標に向かって他の人を引っ張ってゆくのが「リーダー」で、その力を「リーダーシップ」と言っています。
すなわち「リーダーシップ」は、管理職など、特定の地位にいる人に与えられた特権ではなく、その他千葉にいる人の「責任」と捉えるべきであるとも言っています。
リーダーは自分の部下や関係者などを支援しながら、その結果に責任を持つことが求められるのです。すなわち、何かがうまく行かなかった場合は、その担当者だけの責任ではなく、リーダーは、それ以上の責任を負うのです。
である、とも言いました。組織的活動において、リーダーは失敗を人のせいにしてはいけません。メンバーの行動の責任はリーダーにあるのです。
すなわち、責任を取れる人がリーダーであり、その姿勢が、部下や関係者からの信頼を得ることに繋がるのです。
■2-21 「リーダーシップ」のある人の特性を分析する 「リーダーシップ」という言葉は、ビジネスパーソンにとりましては、耳にたこができるほど、よく聞きますが、改まって、それはどのようなことなのかを説明するとなりますと、なかなか難しいですね。
ドラッカーのリーダーシップ論につきましては、既述の通りですが、他にも、いろいろな先生方が、いろいろな説明をしています。
リーダーシップとは、どのようなもので、リーダーシップのある人というのは、どの様な人のことを指し、それを自分でも活かせるようにするには、どうしたらよいのでしょうかいう、原点に戻った取り組みも必要ではないでしょうか。
それにより、自分自身のビジネス活動をどのようにしたら良いのかという観点で、新たな発見が見つかるかもしれません。
「リーダーシップのある人とは、どの様な人」なのでしょうか。これを追求しますと、リーダーシップとは何かが見えてくるでしょう。
多くの人が、口にするキーワードとして「カリスマ性」という言葉があります。確かに、有能なリーダーというのは、カリスマ性を持ち、部下をぐいぐいと引っ張ってゆくというイメージがあります。
しかし、既述の通り、ドラッカーも言っていますが、リーダーシップというのは、持って生まれた才能ではなく、仕事を通して身につけるものです。すなわち、努力次第で身に付けられる能力なのです。
長年の経営コンサルタントとしての経験から見ますと、リーダーシップのある人というのは、いろいろなタイプがあり、一概に言うことはできませんが、少なくても、以下のような行動をとる人が多いといえます。
まず、「基本を大切にする」、原則重視の姿勢です。すなわち、目標とか計画が明確であり、それぞれのコンセプトが明確で、判断に困ったときに用いる「ものさし」を持っています。吉田茂元首相にかわいがられた白洲次郎は、原則重視の姿勢が高く評価されています。
関係者とのコミュニケーションを大切にし、その中から勝ち得たノウハウを蓄積しています。入手した情報は、本当に「事実」なのだろうか、単なる推量や伝聞に過ぎないのではないのだろうか、クリティカル・シンキング的視点を忘れず、現状を鵜呑みにせず、ウラを取ることを忘れません。
目標や計画を立案するときに、5W1Hで思考します。また、その実施に当たって障害となることはないかというように、事前に予測し、その対応策を複数用意します。
「先ず隗より始めよ」の精神で、自分自身が先頭になって行動することもあり、有言実行で、背水の陣をしいて、真剣に取り組みます。
そして、なによりも、気配り、心配りが行き届き、相手の立場でものごとを考えることが身についています。
この様に見てきますと、「その様な人は、理想的人物であって、そのような人は存在しない」という声が聞こえてくるようです。
これらを全て兼ね備えている人は、希有な存在でしょう。
経営コンサルタントとしての経験から、リーダーシップを発揮できる人というのは、不思議なことに「始末書」を多く書いている傾向があります。
彼等の多くは、「熱い心」を持っていて、そのために、時にはカッカすることもあります。規則を遵守するのが基本ですが、原則重視と言いながらも、時にはルール違反をすることもあります。気が短い人も多いです。松下村塾の吉田松陰が、その代表的な一人といえます。
新しいことでも積極的に挑戦し、自分の実力以上の課題にも果敢に挑みます。部下の指導でも、その部下にとって与えられた課題の荷が重くても、「答を教えないで、自分で考えさせる」という姿勢ですので、部下は失敗をします。
リーダーシップのある人は、失敗こそが成長の契機であり、失敗から学べることを熟知していますので、部下が失敗しても部下の責任を問うたり、それを部下の責任として押しつけたりしません。
■2-22 「リーダーシップ」のある人・ない人 「リーダーシップのある人からコンピテンシーを学ぶことは難しいです」と、既述していますが、それとは矛盾するようですが、リーダーシップを発揮できる人には「熱い心」があるという側面が共通していることは事実と考えます。 前項で、リーダーシップを持つ人の特性を述べてきました。ここで、視点を変えることで、リーダーシップとは何かを深める意味で、逆に、リーダーシップの弱い人の特質を、少々見ておきましょう。
リーダーシップのない人に共通しているように思えるのが「内向き思考」「自己本位」な面が強いことです。
リーダーシップの弱い人が、「ものさし」を持っていないわけではありません。とりわけ「お役人」といわれる官僚は、法律という「ものさし」を振りかざして、それをベースに、「自分がこれをすべきか、これは言ってもよいことなのか」を判断します。また実効の団に入りますと、それを自分ではやりません。部下に忖度させ、自分が直接非難される事態に陥らないようにしています。自分の判断は規則に固執し、規則から外れることをしないのです。
「事なかれ主義」、「臭いものには蓋をする」というような発想もしばしば見られます。
リーダーシップのある人は「仕事は自分で作るもの」というのを、あたり前のことと考えています。リーダーシップのない人というのは、失敗は出世に響きますので、失敗を極端に怖れ、できるだけ与えられた仕事だけに絞って時間を過ごします。それほど時間のかからないことでも、できる限り時間をかけます。そのことで、何かを言われますと、のらりくらりと逃げ回ります。
あたかも真剣に取り組んでいるかのように「やっています」というふりをしたり、口にだしたりします。たとえば、2020年にコロナウィルス禍が発生したときに、その対策として効果があるといわれてマスクを全世帯に2枚ずつ配布をしました。そのために何百億円という予算を投じました。
マスクは、コロナ対策として一定の効果はあります。しかし、一家族2枚で、どうやってコロナ感染を防げるというのでしょうか。「コロナ対策をキチンとやっている」と言いたいがために、その効果はともかくとして、対策をしていると言いたいがためとしか思えません。
上司から与えられた人が、仕事の中間報告を上司にせず、上司から、「あれ、どうなっている?」と問われて初めて、「頑張っています」という言葉を返す状況にもしばしば出くわします。
頑張るというのは人により頑張り度合いのレベル差があります。自分では、一所懸命にやっているつもりでも、別の人と比べてみますと、一所懸命さのレベルが低いことが多いです。
このように、「やっているつもり」になっている行為を「つもり症候群」といいます。
リーダーシップのない人は、自己本位な側面が強いですので、部下に対して関心が薄かったり、自分の考えを押しつけたりします。
また、自分以外の人をあまり信用しませんので、部下を信じて、任せきるということができません。部下も、自分の上司から信頼されていないことを感じ取れますので、積極的なコミュニケーションをとろうとしません。その結果、双方のコミュニケーションも少なくなり、仕事もスムーズに運ばず、結果的には信頼関係も強化されないのです。
上述のことの中には、リーダーシップとは直接の関係がないものが含まれますが、概して、リーダーシップのない人に見受けられる事項です。
一方、リーダーシップを発揮できる、多くの人が「熱い心」を持っています。
しかし、リーダーシップのない人が、必ずしも「熱い心を持たない」「やる気がない人」とはいえません。
リーダーシップのない人は、自分自身に自信を持てない人が多いです。そのために、自分の言いなりになるような「子分」を作ることに執着します。そして、自分に従わないような人とは差別します。「公平性の原則」ということを無視しがちです。
小心でリーダーシップのない人は、部下を信じていませんので、部下に対して簡単なことでも、そのやり方に対して細かく指示を出します。中間チェックも、自分の指示通りやっているかどうかと言うような低レベルのチェックに留まってしまい、またあら探しのような重箱の隅をほじくるようなことを重大事であるかのように叱責します。
中には、やる気満々の管理職には違いないのですが、管理職という立場を理解できていない人がいます。
部下に指示して、やらせるには、いろいろと説明をしなければなりませんし、中間チェックも煩わしいという思いが強く、「自分でやった方が早い」と考えます。部下にやってもらえば、自分は管理職ならではの仕事をすることができますのに、部下に任せられないで自分でやってしまうのです。
その結果、自分は忙しく動き回っていますので、「忙しい、忙しい」と口にしながら、自分自身は仕事のできる人間であると思い込んでしまっています。管理職としての職務を行えば、組織として効率が上がることに関心が薄かったり、無視したりします。
リーダーシップのない人は、機会損失に気がつ化ない人が多いのです。
■2-23 「リーダーシップ」と「マネジメント」の違い リーダーシップのある人というのは、既述の通り「熱い心」を持つだけではなく、リーダーシップとマネジメントの双方を兼ね備えて持っています。 ここで、リーダーシップとマネジメントの違いについて、考えてみましょう。
この両者の違いは、なんとなく違いがあることは感じられますが、両者を関連付けたり、対比したりして考えたことのない人が多いのではないでしょうか。中には、その両者が融合してしまって、本質的なものを見失ってしまっていることに気づかないでいることもあるでしょう。
この両者には、違いがあり、それぞれにそれなりの役割があり、やるべきことが異なります。
リーダーシップは、将来に向けてのビジョンを明確にして、長期的で大局的な視点を持って、その目的が達成されるように導いてゆく力のことです。相手のモチベーションを高められなければなりません。
目的とそこに求められる成果に着目し、目標達成に向けて全力を尽くします。その過程におきましては、これまで体験したことのない方法を取り入れて、新しいことに挑戦することもあるでしょう。
従来の延長線上でのやり方では、たどり着けない、創造的な方法を編みだして、火事場の莫迦力といわれるような、期待以上の成果を上げることもあるでしょう。
熱い心を持って、チーム全体を導いていくことがリーダーシップの力でもあり、組織に必要なことでもあるのです。
一方、マネジメントとは、目標・目的達成のための手段を明確にし、組織的に活動して、成果に結び付けることです。わかりやすい言い方をしますと、リーダーシップが、what to に重点がおかれているの対して、マネジメントは how to に力点が置かれます。
中長期経営計画が、そこに盛り込まれています経営戦略を実現するための方策であります年度計画を達成するために、その具体的な戦術や戦技を、組織の年度計画とし、その実現のための各担当者の年度計画をベースに進捗管理を行ってゆきます。
経営資源の効率的な活用を、管理会計的な進捗管理を行うことにより、計画を必達してゆきます。PDCAの考え方をベースに、双方向コミュニケーションを重視した「温かい管理」を実施して行くことにより、全社員の成長を並行して進めてゆきます。
当然、その過程の中では、経営環境や市場動向の変化を考慮に入れたり、リスク管理の観点から、予見されそうな問題回避の行動をとったり、業務運営法を改善したりしてゆきます。また、その様な日常活動の中で、自社のノウハウの蓄積を忘れてはなりません。
このことからも「何を、どちらの方向に向かって行うか」というリーダーシップと、5W1Hに基づいて業務を進めるマネジメントとは、異なることであることを、ご理解いただけたと思います。また、その両者を持ち合わせる行動が求められる重要性も、言うまでもありません。
■2-24 代表的なリーダーの理想型の理論 PM理論 リーダーシップを語るときに、忘れてならないのが「PM理論」ではないでしょうか。
PM理論は、管理理論としては珍しく、日本人が考案した、リーダーの分類法です。1966年に、社会心理学者であります三隅二不二氏によって提唱されました。
PM理論は、組織的な活動を、リーダーが持つ力、すなわち「リーダーシップ」の観点から見てみようという考えです。「組織をさらに発展させる機能、すなわちコンピテンシは何か?」という観点で考察したリーダーシップ理論なのです。
リーダーシップを、リーダーに必要な要素として「目標達成」に対する行動面と、「組織活動」という人間関係性の二面性をピックアップし、マトリックスに組み合わせてリーダーを分類しようという試みです。
類似した理論として、FFS理論やマネジリアル・グリッド論がありますが、後者は、ほとんどのリーダーシップに関する書籍などで詳説されています。前者は、アメリカ海軍におけます「ストレスと性格」の研究において開発されたもので、経営コンサルタントなどの支援が必要なために、ここではPM理論をご紹介します。
PM理論では、目標を達成する意識や行動力を「P:Performance Function」、「組織活動・人間関係」面を「M:Maintenance Function」とし、それをXYの二軸にして、4つのセルで考察しようという考えです。
目標達成機能といわれますP機能のPは、既述のとおり、PerformanceのPです。出来栄えとか、成績、性能などの意味を持つ言葉ですので、組織が問題発見・課題解決などの業務を通し、生産性を高めて目標を達成する機能です。リーダーとして求められる「結果」をだせる力が評価されます。
それに対して、集団維持機能のMは、Maintenanceの頭文字です。持続、維持とか保守保全というような意味を持っています。メンバーや仲間が相互信頼し、各自の強みを充分に発揮し、弱い部分を補完し合いながら、良好な人間関係を保ち、組織的な活動ができる、リーダーとしての力が評価されます。
M機能が強いですと、職場の雰囲気は一見しますと良好に見えます。しかし、放任主義的な雰囲気から、メンバーが、自分の力以上に成果をあげたり、成長したりすることは困難です。
P機能とM機能のバランスがとれるように伸ばして行かなければなりません。
■2-25 PM理論を実務に活かす PM理論を上手に活かすには、PM理論を知らなければなりません。
PM理論は、PとMをXY軸に見立てて4つの象限で見ます。PとMの二要素の強い方を大文字にして、この4つのセルを「PM型」「Pm型」「pM型」「pm型」に分類しています。
PもMも、高いことが望ましいことは想像がつきます。それぞれの特質を見てみましょう。
PM型
PM型リーダーは、理想的なリーダー像といえます。目標達成意識が高く、その上、組織的活動もできますので、「1+1」が「2」ではなく「2以上」にもなるのです。中には、「百人力」の人もいるかもしれません。
是々非々を基調にし、厳しさと優しさを兼ね備えた人が多いです。組織力を活かすためにメンバーの特質を掴み、それを活かすことが上手です。各メンバーに、自分の任務意識を持たせ、その目標や計画が必達できり、全体に相乗効果を出すように仕向けられます。
各人の個性を活かしてはいますが、バラバラではなく、巧みな組織運営術で全員を同じベクトルにあわせるようにぐいぐいと当速力を持って牽引してゆきます。それが、その組織の目標を達成するだけではなく、次の一歩のための活動も包含していますので、成長が持続します。
Pm型
Pm型は、別名「ワンマンプレー型」とか「一匹狼型」といわれます。目標達成意識はあるのですが、組織的な活動が苦手な人達で、組織力を活かすのではなく、個人プレーで最大の効果を上げようというタイプです。
P機能が強いですと、短期的に成果を上げられることもありますが、組織的な活動ができませんので長期的に、それが持続することは難しいでしょう。
Pm型の人が、リーダーになりますと、組織のメンバーはやりたい放題のことをやってしまう欠点があります。メンバーに、自分のノウハウを伝授するような行動を取れると良いのですが、メンバーが目に入らないと言いますか、育成という意識も希薄です。彼等の相談相手というより、「俺のやり方を盗め」という指導法です。そのために、メンバーは個性を伸ばす機会になかなか巡り会えません。
何か、新しいプロジェクトを推進しようというときに、「部下に仕事をやらせるのは、まどろっこしい。教える時間がもったいないので、自分でやってしまった方が早い」と、自分で動いてしまいます。
このタイプには、実力を持っている人が多いですので、個人としての結果は出せますが、せいぜい一人分の数十%程度の結果に留まります。ですから、組織全体としては、必ずしもコンスタントな結果が得られる状態ではありません。
組織崩壊の懸念が高いです。このタイプのリーダーは、「温かい管理」を身に付けることにより変身できます。
メンバーに対する意識を持ち、メンバーに応じたアドバイスをしたり、メンバー間のコミュニケーションを円滑化させ、調整をはかったりするなどしますと、PM型に近づき、よい方向に向かう可能性があります。
pM型
pM型は、俗に「八方美人型」と言いまして、その名の通り、仲間との融和性が高いのが特徴です。仲間意識が高い一方で、目標意識が低いという難点があります。
積極的に行動できる構成メンバーである場合には、自分自身で目標を設定したり、自発的に業務に取り組んだりと言うことができます。中には、「うちの上司は、管理職としては今ひとつなので、部下の俺たちが頑張らないとうちの課はもたない」と言って、上司のたりない部分を補うなどの行動を起こす場合もあります。
一方で、構成メンバーが必ずしも、その様な人達だけではありませんので、部下に対して目標目標意識を持たせることができず、PDCAが上手に回ってゆかないことが多いです。
リーダー自身が目標意識が高くありませんので、進捗管理などをすることをせず、厳しさに欠ける、”ぬるま湯”組織であることが多いです。
pm型
pm型は、場当たり型といわれますが、あまり積極的な活動をしないタイプです。組織的活動が苦手であり、目標意識も低いですので、部下に対して指示を出すわけでもなく、自分自身で何かをするわけでもありません。
リーダーとしては、問題があり、その上司いかんにもよります。管理職研修をやり直させたり、日常活動の中でOJTによる教育を図ったりして、鍛え上げる必要があります。
多くの場合には、その様な努力をしても、pm型の人は、pMやPm型に返信することが困難です。組織崩壊や部下のやる気喪失状態にならないうちにリーダー職を外すことも必要でしょう。
それぞれの特質を理解して、組織を構成し、運営していくことにより、PM理論を実務に活かすことができます。
■2-26 PM理論を活用する方策 リーダーが、リーダーシップを発揮できるようになるためには、「リーダーとしての自覚を持ち、組織で動くことの重要性を再認識する」ことから始めるべきでしょう。
リーダーシップは、先天的に備わっているという側面がないとはいえませんが、後天的であって、努力次第でも身に付けることができるということを信じることです。
ここでは、PM理論の活用により、メンバーとの信頼関係を強化しながら、リーダーシップを発揮するという観点で見て行きます。
P機能を向上させる方法
既述の通り、P機能(performance function)とは、「目標・計画をもとに指示・命令を出し、生産性を高め、目標を達成する機能」のことです。
リーダーの立場にいる人が、P機能を高めるためには、PDCAと、別項で述べています「共通目標・共通認識・共通行動目標」を常に念頭におくことです。
企業や組織として基本思想を示しています経営理念・長期基本戦略・中長期経営計画などの上位概念という共通目標を、共通認識し、それに基づいて年度計画の達成に向かって共通行動するのです。その目標の達成のために、リーダーとしての月次の方針と計画を部下に明示して、自分が何を望んでいるのかを部下に示すことです。
そして、それを達成するために各自が当該月に何を、だれに対して、いつまでに、どの様にやるのかを明記させ、その進捗状況をチェックすることが、リーダーシップを発揮する基本なのです。
進捗チェックは、上位概念を示す書類、計画書および事前に提出させた報告書を面前に置いて、口頭報告をさせ、計画や、その前に出した指示命令の結果がどうであるのか、その原因・理由は何か、それに対して、今後どの様に進めてゆくのかをアドバイスしたり、新たな指示命令として出したりします。
それら双方向コミュニケーションを口頭でのやりとりだけに留めず、そのやりとりを報告書等に記入をしておきます。それが、次回のコミュニケーションのチェック項目ともなります。
これら、誰もが知っている管理職としてのあたり前を、あたり前に継続していくことが、ノウハウの蓄積を通して、リーダーとしての実力を高めてゆくのです。
M機能を向上させる方法
M機能(maintenance function)は、既述の通り「組織全体の人間関係を重視し、その融和により、組織としての力を高める機能」のことです。
組織を統率して、管理会計的視点で予実積管理をしたり、部下育成を図ったりと、別項で述べています「温かい管理」を推進してゆきます。
コミュニケーションも、一方向の上から目線で行うのではなく、双方向コミュニケーションが基本で、相手の人間性を重視、相手の納得ることを目標とします。
何よりも双方の信頼関係醸成が基本になければなりません。「アメとムチ」という言葉は好きではありませんが、相手の性格に応じて、持ち上げたり、厳しく接したりと緩急を得た対応が必要です。
「相手も人間である」という意識を忘れてしまいますと、上に立つ者という意識から上から目線になりがちです。人間というのは、必ずといっても良いほどに、何かよい面を持っています。その良い面を見て、評価をしてあげることが重要です。時には、相手が愚かに見えることがあるかもしれませんが、それは己の驕りなのです。
自分も部下も同じ「人間」なのです。悩むこともあれば嬉しいこともあります。部下の悩みに寄り添う気持ち、部下によいことがあれば他のメンバーと共に一緒に喜んであげることも必要です。強みを引き出し、本人が働きがいを感じることができるように導くことが、双方の信頼関係醸成に繋がるのです。
PM理論は、リーダーの資質を見るだけではなく、部下達も、同じように分類できます。その特質を活かして接することが肝要です。こじんのちからにはげんかいがありますので、組織を活かして動ける組織力の維持と強化を図ることが、関係者を幸せにするのです。
■2-27 リーダーシップをとる方法 リーダーシップの取り方に決まりがあるわけでありません。リーダーとメンバーの組み合わせで、何十、何百通りの方法があると考えると良いのではないでしょうか。 そうはいいましても、大雑把な分類は可能ですので、リーダーシップの取り方をいくつかご紹介します。
トップダウン型
典型的なリーダー像といっても過言ではありません。計画や目的だけではなく、自分の基本的な考え方を掲げ、それに向かってメンバーを引っ張ってゆきます。
カリスマ性のある人が多く、メンバーもリーダーを慕ったり、尊敬したりすることが多いです。
一方で、このタイプのリーダーは、自分の考えに固執しすぎたり、理想論に走りすぎたりして、メンバーの中には反発心を持つ人もいます。
自分の考えを押しつけるのではなく、なぜ、この様なことを行うのか、その本質をメンバーに納得させることにも腐心すべきです。
率先垂範型
リーダー自身が実務執行力を持っていて、自分が率先して現場業務をこなし、メンバーは、リーダーの背中を見ながら、リーダーのやり方を手本とし、ついていくタイプです。
メンバーは、よいお手本がありますので、その通りに実行すれば、自分もそれなりに仕事ができてしまいますので、自分で工夫して仕事をしたり、悩んだりするという経験の機会が少なく、リーダーが変わりますと、途端に萎んでしまう人もいます。
リーダーも、自分が手本を示すこと以外の部下育成能力が充分でないことが多く、部下の個性を活かした成長が阻害されてしまいます。また、自分で仕事ができるために、だれもが同じようにできると思い込んでしまい、それをメンバーに期待します。期待が大きすぎて、それを感じ取るメンバーは自信を喪失したり、やる気が失せたりすることがあります。
リーダー自身が、自分で手本を示すつもりが、自分で部下がやるべき仕事にまで手を出したり、自分のやり方を押しつけたりして、メンバーから煙たがられることもあります。
アドバイザー型
面倒見のよい人に多く、メンバーにアドバイスをしながら、その人の能力を引き出せるタイプのリーダーです。
コミュニケーション能力が高く、メンバーとの報連相を重視します。メンバーのやり方を尊重するようにしますと、その人の能力を最大限活かせ、成長させることに繋がります。
一方で、アドバイスが行きすぎて、「答まで教えてしまう」傾向があり、せっかく、よい面を持っているにもかかわらず、良かれと思ってやっていることが、メンバーの成長阻害に繋がっていることに気づかないことが多いです。
育成という、時間をかけるやり方は得意ですが、「今月、あと1000万円の受注をとらなければ、目標値に達しない」というような、緊急性が高く、短期的に対応しなければならないときに、充分に力を発揮できないことが多いです。
カウンセリングのスキルを高めますと、一層効果を上げることができるタイプです。
ボトムアップ型
メンバーの自主性や経験からの提案を重視し、それに基づいて自分の組織の運営を行うタイプのリーダーです。
メンバーは、自分の提案に熱心に耳を傾けてくれるリーダーに対して好感を持ち、モチベーションが高まる人がおおいです。
一方、メンバーとのコミュニケーションは、傾聴が中心であり、報告の時間が長かったり、会議の回数が多かったりして、実務の時間にしわ寄せが行ってしまう欠点があることが多いです。知識・情報が豊富であったり、能力の高いメンバーは、自分の成長の機会が多く歓迎したりしますが、そうでない人達は、ますます萎んでしまいがちです。
このタイプのリーダーで、自分自身に自信のない人は、メンバーの言いなりとなり、組織としての体をなさなくなってしまうこともあります。リーダーは、目標や計画、方針などをキチンと示し、その実現のための提案や企画を求めるべきです。それにより、メンバーも、それに基づいて検討し、彼等からの声にも方向性が出てきて、組織としてのまとまりもできます。
メンバーの声の中には、見当違いであったりして、採用はできないことも多いでしょうが、それに対しても真摯な対応が求められます。良いものは取り上げ、即実行はできないが将来の課題として重要なものは、条件が整った時点で方針や計画に組み込むようにし、メンバーの声を大切にする必要があります。
コーチングのスキルを身に付けますと、自分がそれまでやってきたやり方の問題点にも気づき、よいリーダーに成長できる可能性が高いです。
その他
人間関係を重視する「仲良し型」のリーダーもいます。ボトムアップ型と同じような長所短所があります。人間関係を重視するあまり、メンバーを信頼しすぎて、期待を裏切られることもあります。
友好的な人間関係を重視するあまり、「八方美人型」になってしまい、相手に対しては真剣に耳を傾け、その人を傷つけないように、その場に応じたことを言う傾向があります。そのために、相手により、趣旨が異なることを言ってしまい、俯瞰的に見ますと矛盾が生じてしまいます。
これらと対照的なのが、「ワンマン型」のリーダーです。自分の言うとおりにしてくれないと気が済みません。自分の言うことを素直に聞く人をひいきし、そうでない人の評価が高くなくなることもあります。メンバーの言うことに耳を傾けることが少ないために、リーダー自身の成長も阻害され、メンバーも萎縮し、成長できないでいます。
中には、リーダーとしての能力や自覚が欠如していて、「無責任型」のリーダーもいます。同じ無責任でも、「物忘れ型」「朝令暮改型」のリーダーも散見され、会議の決議事項や、自分の指示や命令すらわすれてしまって、それらに反する言動をとったりします。
この様なリーダー不適格者は、再教育をしたり、部下のいない役職に就けたり、必要に応じては降格などもやむを得ないでしょう。
上記は、代表的なリーダーシップの取り方ですので、そのいずれかにマッチするわけではなく、TPOにより、使い分けが必要です。自分が、どのタイプのリーダーに近いのかを再確認し、自分自身がリーダーとしてどう変身すべきかを謙虚に考える必要があります。
■2-28 部下のタイプ別リーダーシップの取り方 管理職がリーダーシップをとって、業務推進を行う場合に、部下やメンバーの性格や経験など、彼等のパーソナリティに応じた対応をすることにより、効果に差が出てきます。
ここでは、営業パーソンを例に、仕事のやり方から営業パーソンのタイプ分類方法をご紹介し、その分類に応じたアドバイスや部下指導を行うことに利用していただければ幸いです。
営業パーソンというのは、基本的には外に出ていますので、報告は不可欠です。その報告書であります、日報をベースに、部下をタイプ別に分類して、リーダーシップを発揮することを、長年、経営コンサルタントとしてやってきました。
まず、業績という観点で、業績を上げているかどうかというように分類します。
以下の説明は、その分類の中で、業績を上げている営業パーソンを中心にロジックツリーでご紹介したのが、図にあります通りです。
成績の良い人を「挑戦性」という視点でみて、その指標が高いか低いかで分類します。業績は、そこそこ上げていますが、挑戦性が低いという分類となり、私は、この様な営業パーソンを「能力出し惜しみタイプ」と呼んでいます。この様なタイプの人は、仕事のしかたを変えるだけで、素晴らしい営業パーソンに変身できる可能性があります。
月次の計画・目標が提出されましたら、それをベースにじっくりと話し合いをし、月度末に自己採点させる基準も計画書に追記させます。日常活動におきましては、終業前に、翌日のスケジュールを確認します。そして、翌日の報告を受けるときに、そのスケジュール通り行動したのかどうかのチェックをします。また、その結果がどうであったのか、今後の見通しはどうかを、営業日報に追記させます。日報や計画書への追記事項も、その後の報連相の際に必ずチェックをするようにして行きますと、もともと能力を持っている人に多いタイプのために、業績が目に見えて向上して行くでしょう。
挑戦性指標が高い人は、我武者羅に突っ走ってしまう人がいますので、安全性感覚という視点で、営業パーソンを分類しています。この指標が高い人は、挑戦性も高く、安全性も重視するタイプです。彼等が、計画的に行動しますと業績が向上して行きますので、計画性があるか否かで分類します。
この分類で、計画性が高いと評価された人は、優秀な人が多いですので、私は「幹部候補生」という分類名を付けています。
計画性が低い場合には、管理会計的な分析を用いて、分類を進めてみます。
訪問件数は、営業パーソンのタイプを知るのに重要な指標です。一日の訪問件数が多い場合には、さらに一訪問当たりの投入時間の長さを比較します。訪問件数も多く、時間投入も長い場合には、かなりハードな営業活動をしていることになり、その努力を高く評価すべきです。
それらの営業パーソンが新規顧客開拓に力を入れているなど、将来の課題にも取り組んでいる場合には「準幹部候補生」と見て良いでしょう。新規顧客開拓など、将来への布石
を打たない人の多くは、ベテランといわれる営業パーソンに多いです。その視点でのアドバイスなどに力点を置きますと、もともと、営業パーソンとして良いものを持っていますから、業績が改善されて行くでしょう。 この様に、営業パーソンを”品定め”する観点で分類して行きますと、どの様な長所・短所を持っているのかが見えてきますので、アドバイスの重点が見えてきます。あとは、温かい管理の手法を用いて行きますと、営業パーソンは成長して行くでしょう。(当該項をご参照ください)
部下やメンバーが、自己管理ができるようになり、自律してきますと、成長への変化が見てきます。やがて、自律的に、あるいは彼等が主体性をもって、リーダーを支援し、組織に貢献するようになってきますと、リーダーシップを発揮した証左としてみることができ、リーダー自身の励みにもなります。
すなわちリーダーシップというのは、適切にそれが行使されますと組織が強化され、計画の達成率が改善され、経営理念や経営計画などの実現性が高くなって行くのです。
■2-29 日本型の新しい「管理」のあり方 一人の人間が頑張るよりも、複数の仲間が協力しますと「1+1>2」となるのが、リーダーシップの力です。
リーダーシップは、一般的には「指導力」とか「統率力」と日本語表記されます。
これまで述べてきましたように、リーダーシップに重要なことのひとつは、目標達成のために計画を共通目標として明示し、それを関係者に共通認識させ、皆で力をあわせて共通行動に繋げることです。その結果、メンバーの意欲が高まり、リーダーへの「信頼」に結びつきます。そして、組織そのものがますます活性化し、目標を達成することに繋がるのです。
私が所属しています経営コンサルタント団体では、リーダーシップが、メンバーを引っ張る「牽引力」であるのに対して、既述のように「マネジメント」という類似語がありますが、それを区別しています。
「牽引力」に対して、マネジメントは「統制力」といいます。リーダーにとりましては、この両者いずれもが必要で、この両者をあわせたものが「管理」なのです。
上述の協会では、管理を次のように定義づけしています。 内外の時代変化を先読みし、
発展的P-D-C-Aを継続し、
計画との差を明確にし、
その対応策をノウハウとして蓄積し、
仕事のしやすい環境・条件づくりを通じて、
機会損失を最小限に押さえ、
組織で活動し、仕事の効率を最大限上げる
有機的に連動した行動
【 注 】 同協会では、別項にありますようにPDCAを「PDC+s/a」と表記し、acheduling + adjustingとしています。 また、これを受けまして、リーダーシップにつきましては、次のように定義づけしています。
内外の時代変化を先読みし、
自分の信念や理念を持ち、
その適切性を常に疑い、重考し、
自分に自信を持ち、
目的と手段を明確にし、
常に全体最適の視点を持ち、
機会損失を極力抑えられるように工夫をし、
関係者が、組織の方向性と人間性の重要性を理解し、
期待される成果を達成するために
自主的に行動できるように
”温かい管理”を用いて導ける力
「温かい管理」の基本は、「人間性や自主性を重視して、仕事をしやすい環境・条件を作る」ことです。
リーダーシップもマネジメントも、またそれを統合した管理も、目標に向かって、組織的に動くことにより、結果に結びつかなくては意味がないのです。
リーダーシップというのは、「リーダーが持つべきスキルである」と考えていらっしゃる人も少なくありません。しかし、リーダーシップというのは、マネジメントと両方の相乗効果を活かして、管理という統合力があって初めて実務に活かせるのです。
リーダーはいうまでもなく、リーダーだけではなく、メンバー一人一人がリーダーシップを発揮することで、個人も組織も成長せせていかなければならないのです。
「管理とは、仕事をしやすい環境・条件作り」のことですので、リーダーシップというのは、部下に対する牽引力だけではなく、上司に対してもリーダーシップを発揮し、上司を動かすことにより、仕事がしやすくなるように条件を整えていくことなのです。
また、関連部署や関係者に対しても、同様にリーダーシップを発揮することにより、目的や計画を達成することにつなげてゆかなければなりません。
リーダーシップを発揮するのに、最もやっかいな相手は、自分自身です。自分自身が、仕事をしやすくするために、自分自身にリーダーシップを発揮してゆくのです。
この様に各方面にリーダーシップを発揮しますと、自分の思考法が変わってきたり、視野が広がってきたりします。「自分がやらなければだれがやる」という気持ちが強くなり、主体性が増してきます。それがモチベーションの高揚に繋がりますので、仕事がスムーズにはかどるようになるのです。
自分の行動力が高まりますと、上司の見る目も変わり、また周囲の人も耳を貸してくれます。結果として周囲にも変化が起こり、それがさらなる善循環(好循環)に繋がり、全社に活気が漲ってくるのです。
「管理というのは、監視され、縛られるような感じがする”冷たいもの”」というイメージが強いですが、「管理とは”温かいもの”」なのです。
■2-30 リーダーシップを発揮するために決断力を磨く(1) 高いリーダーシップをとれる優れたリーダーというのは、人の心を捉えるのが上手であったり、こちらが意図していないのにいつの間にか、いろいろなことをしゃべらされたりと、催眠術をかけられるがごとくの人が多いです。
素晴らしいリーダーシップが採れるようになるためには、それなりのスキルが求められます。どの様なスキルを磨いたらよいのかについて、長年の経営コンサルティング経験からまとめてみたいと思います。
◇ 問題発見・課題解決と目標設定力
リーダーシップを発揮するには、リーダーとしての考え方や目標を明確にすることが不可欠です。それらを明確にするには、現状を正確に分析し、把握することが不可欠です。
それには、「現状は、これで良いのだろうか」「この状況はなぜなのだろうか」等々、クリティカル・シンキング的な発想を常に巡らせることです。
リーダーシップにおけます目標設定力とは、マネジメント上からは、短期的な成果を無視はできませんが、スパンの長い、実現可能性も判断基準において「共通目標・共通認識・共通行動」を掲げて、メンバーが動いていくべき目標へとベクトル合わせを図ることです。
これらは、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングというスキルを身に付けますと、次第に、それが習慣化してできるようになりますし、業務を通じて利用しているうちにスキルがさらに高度化してゆきます。
これには、俯瞰的・客観的なものの見方や全体最適を目指した決定を常に意識することも必要です。これにより、先入観に捕らわれる思い込みの少ない判断に繋がります。組織やプロジェクト全体の流れを把握でき、部分最適で自己満足することを回避できます。
2-31 リーダーシップを発揮するために決断力を磨く(2)
前項で、リーダーシップの決断力を磨くために、問題発見・課題解決について記述しました。それに関連して追記します。
◇ 目標の明確化と伝達力
年度や中期的な目標は、箇条書きにして、数項目に絞れるような中味を短文で表記したり、標語的に本質を表現したりします。
それを理解させるには、「年度経営計画」などと題した、仰々しい文書を配布するだけでは不充分です。
短文や標語を、年度や月度の計画書にも明記します。それら配布した文書を双方向コミュニケーションのたびに目の前に置いて、それを見ながら話をしたり、話の途中で、その資料の当該する部分を指し示したりします。
社内に掲示するとか、唱和するとか、いろいろな方法を使う企業があります。企業独自のやり方を否定しません。いつでも目につくようであったり、頻繁に耳にするようであったりできる方法をとればよいと考えます。
上位計画に基づいて、各自の思いを込めて、個別の計画書を作成させることは不可欠です。それだけではなく、組織の計画書作成にも参画させたり、発表会を開いて話を聴く機会を設けたりする方法もあります。
◇ 情報収集力と判断力で適切な意思決定
ビジネスパーソンにとりまして情報は不可欠です。リーダーには、それはいうまでもなく、その情報を分析し、自社用に加工して精度を上げ、そこから必要な情報を導き出し、的確な意思決定をするようにします。
前述のように、俯瞰的、客観的なものの見方とともに、細部まで詳細に見て行きますと、そこから見えることも見落とさない「木も観て森も観る」力が必要です。それにより顧客や市場のニーズを先取りでき、ライバルに差異化(差別化)した商品・サービスを提供できることに繋がるかもしれません。
2-32 リーダーシップを発揮するために決断力を磨く(3)
リーダーシップをとるには決断力も不可欠です。決断力の磨き方に漢する最終回です。
◇ リーダーシップにとっての決断力
情報収集・分析をもとに判断ができても、それを実行して、効果を上げるという決断ができませんと、それまでの作業を活かしきれません。
部下の面前で決断しなければならない状況に、日常業務の中でしばしば遭遇します。論理思考上では、「発想の瞬発力」が求められます。すなわち、平素よりデータ思考と論理思考ができていますと、適切なタイミングで、適切な対応をとることができます。
決断ができないのは、検討が十分でなかったり、経験が浅かったりという事情が多く自分に自信がないからでしょう。ロジカル・シンキングによる思考法等が身につきますと、思考の手順や思考の深さが次第に高度化してきて、自分の判断に自信を持つことができるようになります。また、管理会計によりデータ武装ができていますと、話に説得力が増します。
「念には念を入れる」という癖を付けておくことも大切です。自分が入手して情報は「事実」なのか、「正確」なのかというクリティカル・シンキング的な発想をし、そのウラを取るようにします。ウラは、自分の考えを裏付けするような、自分に都合の良いような取り方ではなく、「真実」「正確」「適性」なのかどうかを確認できるような取り方をします。できれば、性質の異なる、複数の方法でウラを取るようにしましょう。
◇ 行動力
ダメ企業の経営者・管理職は、頭で仕事をして、体を動かさない、いわゆる「頭でっかちの行動力足らず」の人が多いです。
平素から、部下やメンバーに共通目標を掲げ、双方向コミュニケーションを通じて共通認識し、自分自身も彼等の行動とベクトルをあわせた共通行動をとるように心がけます。
また、複々線思考・行動が取れなければなりません。リーダーの大半が、一つの仕事だけではなく、複数の業務を並行して進めなければならないでしょう。常に複数のテーマを並立的に思考し、行動できるようでなければならないのです。
部下やメンバーは、万一、自分達の判断が間違えていたり、結果が好ましくなかったりしても、それが「失敗」ではなく、「気づきの機会」であるというプラス思考の判断に繋がるでしょう。
◇ バランス力
リーダーというのは、決断の連続といいましても過言ではないほど、その連続です。
リーダーは、理念や計画、ビジョン等を示すだけがリーダーシップがとれるわけではありません。組織全体がスムーズに活動できているのかどうかだけではなく、部下やメンバー一人一人を観て、管理や指導をします。人間関係に気をくばることも重要です。
組織力を活かすためには、同質な人だけの構成よりも、異質、タイプの異なるメンバーで構成された方が、運営は大変ですが、成果の出せる組織として活動できる傾向が強いです。
適材適所を念頭においた、人材配置や職務分掌が必要です。
「経営はバランスである」という名言がありますように、全体最適を常に意識したリーダーシップの取り方と決断が求められるのです。
このような思考法や行動を日常的に業務に用いて、リーダーシップを発揮するだけではなく、個人的な意思決定にも利用することにより、判断力が高まり、その精度が増してゆくでしょう。
■2-33 リーダーシップを発揮するための論理思考や管理会計活用のスキルを磨く 前項では、リーダーシップを発揮するためには、目標・目的意識を持ち、問題発見・課題解決への取り組みを行う貯めに決断力や行動力が必要である旨を記述しました。
ここでは、それをスムーズに進めるために必要な能力やスキルについてお話します。
◇ 論理的に話して、納得を得る
リーダーは、多くの場合に、複数の人を相手にリーダーシップをとることが多いです。そのためには、一人一人がリーダーの考え方を理解し、自分の任務・役割に納得できていなければなりません。
口がうまいだけのリーダーでは、すぐにメッキがはげてしまいます。
プロジェクトの目的とその背景や理由や、何を、どこまで求めているのかが明らかでありませんと、指示・命令を受ける側は、どの様に判断して良いのかわかりません。どの様な障壁が懸念され、どのくらいの経営資源の投入が必要か、時間的猶予や緊急度等々、それを受ける側の立場に立った話し合いが必要となります。
それらが、順序だって話される場合と比べて、主語や目的語など重要な要素を含まない、中途半端で、抽象的な指示・命令では、受ける側が判断に窮したり、その判断がリーダーと行き違っていたりしては、好ましい結果には至らないでしょう。
論理的思考力が、ある人とない人との差は、結果で大きく異なってくるかもしれません。それでは、リーダーとしても困るでしょう。リーダーが求める成果物を得られるような仕事の進め方が求められることはいうまでもありません。
論理的思考力といいましても、いろいろとあります。
論理思考が苦手だといわれます日本人にとりましては、グローバル経済の下では、身に付けなければ単一民族の世界でも生きて行かれません。
私達にとりまして、論理思考におきましては、ロジカル・シンキングが最も身近な存在といえます。ロジカル・シンキングは、論理的思考を養うスキルでありますと共に、論理思考を展開するためのスキルでもあります。
このロジカル・シンキングをベースに、現状など、課題や状況を鵜呑みにせず、そこに疑問を持って取り組むときに使われるのがクリティカル・シンキングです。
論理的思考力は、生まれながらに身に付けている人もいますが、ダイヤモンドと同じで、磨かないと光りません。逆に、論理的思考力を持っていない人でも、それを利用しながら、論理思考を身につけて行くことが可能です。
経営コンサルタントなど専門業務・士業の先生だけではなく、ビジネスパーソンにも不可欠なスキルといえます。
◇ 管理会計思考でデータと情報でリーダーシップをとる
本屋さんのビジネス書コーナーに行って、管理会計関連の書籍を探しますと、すぐに見つかるほど多くの書籍が出版されているのがわかります。それだけ、管理会計に対する関心が高いのですね。
ところが、アカデミックな書籍が多く、これらの本を読んで実務に使いこなせる人や企業がどの程度いらっしゃるのか心配になります。
管理会計は、研究開発から、営業、アフターサービス部門まで、企業のあらゆる分野で利用できます。それは財務分析や営業業績管理、開発部門のスケジュールや開発費管理など幅広い業務で利用できます。
ところが、大半の企業で、管理会計は導入してはいますものの、それを充分に活かし切れていません。管理会計に対する基本姿勢や捉え方が、実務とかけ離れてしまっているのです。
管理会計は、温かい管理で、活かされやすいのですが、温かい管理も定着していないがために、上司が部下の尻をたたく道具というような認識が高いのです。
まず、「管理会計が目指す末広がり八項」を理解してから、管理会計に取り組んでいただきたいと思います。(詳細は当該項をご参照ください)
■2-34 リーダーシップを発揮するために人間性を重視した率先力を磨く 論理的というのは、冷たいイメージが伴いがちですが、適切な論理思考というのは、常に人間性を前提にしていることは、忘れてはなりません。
人間性を活かして率先垂範したり、スピード感を持った意志決定や行動をとったりすることが、リーダーには不可欠です。その中の代表的といいますか、基本的な事項をご紹介します。
◇ 人間性を勘案して相手に応じたコミュニケーションをとる
既述の論理思考というのは、「理屈っぽい」と思われがちですが、人間性重視が前提でなければならないと考えています。
「温かい管理」に基づく論理思考は、人間が持つ力をいかに引き出すのかが問われるほど、人間性を重視しています。
理詰めで冷たいというイメージがもたれがちな論理思考ですが、人間性重視ということが前提で、論理思考がなされれば、けっして冷たいものではありません。
相手の立場を尊重してリーダーシップをとることにより、上司がパワハラ的に部下に仕事を押しつけ、強要するのではなく、部下やメンバーの特質にあわせて仕事をしていただくことが必要です。
相手を尊重して対応しますと、部下やメンバーは、自然と自主的に行動していけるようになりますし、リーダーには、その様に導く力が求められるのです。その結果、メンバーそれぞれが、周囲の人にも良い影響を与えることに繋がります。
そのために、リーダー側は、相手に応じた内容と話し方をすべきです。
たとえば、相手が新人であれば、方法論まで具体的に説明する必要があります。一方、相手がベテランの場合には、方法論よりは、趣旨・目的を中心に話をします。たとえリーダーでありましても細かい部分まで、指示や命令を出しては、受ける側は馬鹿にされているような感覚に陥るかもしれません。
リーダーシップとは、部下やメンバーの自主性を引き出し、業務を通じて能力を高めていく力であるともいえます。
◇ 率先力
上述のようにリーダーシップを活かすには、指示・命令の出し方を工夫するのが基本です。
一方で、自分の背中を見せて、部下を引っ張って行く「率先力」も効果を上げることが多いでしょう。
目標を設定し、その目的を達成するための計画を活用するだけでなく、目標達成に向けて、リーダー自らが積極的に業務に取り組み、時には部下と一緒になって行動することで、メンバーの手本となるやり方も効果を上げることが多いようです。
率先力もリーダーシップに欠かせない要素の1つといえますが、やり過ぎるのは逆効果であることが多いです。やり過ぎますと、甘えが出て、当事者意識を活かすこと繋がりません。やり方によりましては、嫌味にも見えます。
率先垂範が自分の信念であるリーダーにとりましては、良い方法であっても、全てのリーダーにとって、そのやり方が有効な方法であるとは必ずしもいえません。
◇ スピードの時代の拙速巧遅
技術革新に伴い、急激な変化を遂げて、ビジネスのあり方に影響を与えていることは、このシリーズでも、何度も記述しています。コミュニケーションも「光速時代」といわれて久しいですが、モノ同士が情報交換をするIoTは、製造現場にまで大きな影響を与えています。
今日のビジネスには、スピードが求められているのです。
この様な時代に、ゆったりと思考したり、時間をかけてじっくりと開発したり、業務を推進したりする余裕は少なくなっています。
一方で、この様な時代ですからこそ、拙速巧遅ということを常に意識している必要があります。
人間の能力には限界があります。いくら時間がない、忙しいからといいましても、時間がありませんからといって、いい加減でも良いということは許されません。
そうかといいましても、たとえば充分な調査を済ましてからでありませんと、決断し、行動に移せないというやり方では困ります。時代は、時々刻々と変化しています。完璧な調査や情報収集をしても、すぐにそれは陳腐化してしまいます。
「現状では、これで満足しよう」という割り切り方も必要なことがあります。しかし、それはいい加減でも良いというのではなく、与えられた経営資源の中での最善の努力をした結果の判断でなければなりません。
スピード経営が求められる時代の生き方は常に変化していかなければならない部分がありますことを承知しておく必要がありますね。
■2-35 リーダーシップを発揮するためのコミュニケーションスキルを磨く リーダーシップをとるために欠かせないのが、リーダーの意図が正確に相手に伝わり、最善の結果を導き出せることです。コミュニケーションにつきましては、たくさんの書籍や映像教材等が多数出てきていますので、ここでは基本的な事項のみに留めさせていただきます。
コミュニケーションがうまくとれない原因としては、指示・命令を出す、リーダー側の説明不足や言葉足らずの場合と、指示・命令を受ける側の理解力不足にある場合が多いのが実状です。
指示・命令を出す立場にいるときには、漏れがないか、重要ポイントは何か、を強く意識します。「相手の立場に立って考える」ことを、頭で理解するだけではなく、それを実践できる能力が不可欠です。言葉だけでは、意図が正確に伝わらないことが多いですので、文書やプレゼンテーション・ソフトを補助的に使ったりすべきです。
コミュニケーションは、口頭だけのスキルだけではなく、文書等の構成力や作成力も伴わなければなりません。
受ける側には、傾聴力が求められます。傾聴するときに5W1Hを常に意識して、耳を傾けます。重要事項を復唱するというのは、新入社員研修で学ぶことの一つですが、慣れてきますと、油断や驕りから、その意識が薄くなってきてしまいがちです。
リーダーのいうことが、相手に理解されないこともあります。その時には、できる限り、話し合いをすべきです。ビジネスの世界では、時間との制約もありますので、双方納得できない場合には、受ける側が、最後には譲歩して受けることになるでしょう。その場合には、いやいや取り組むのではなく、真剣に取り組む必要があります。リーダーは、それをサポートして、結果が出せるようにしなければなりません。
コミュニケーションというのは、内容だけではなく、タイミングも重要です。タイミングというのはいろいろな要素が絡み合い、一概にどのタイミングがベストかは言えません。ケース・バイ・ケースで対応せざるを得ないのです。
コミュニケーションは、さらに相手に応じたコミュニケーションの取り方も必要です。
たとえば、気が小さい人というのは、他者の反応を恐れたり、失敗しないようにとか恥ずかしいと感じたりする気持ちが多くの人より強すぎます。その結果、本来の自分の姿を、あまり人に見せません。
その様な人は、能力がなくて表現力がないわけではないのです。リーダーとその人という限られた状況の時には、相手が答えやすいように、クローズド・クエスチョンを中心に始め、ポイントにおいては話しやすいオープン・クエスチョンを投げかけます。
会議やプロジェクト・チームないでのミーティングなどでは、話しやすい雰囲気を創り出すことも必要です。気の小さい人に対しては、答えやすい上述のようにオープンやクローズドの質問を投げかけるようにしながら、次第に、雰囲気に慣れてもらうようにします。
私達、経営コンサルタントが初めてお会いする経営者・管理職と接する時には、図のようなやり方をします。参考にしてくだされば幸いです。
■2-36 リーダーシップを発揮するために信頼性を高める リーダーシップを発揮するには、どうすべきか、「あたり前」のことを記述してきました。部下からの信頼関係を得られるようなリーダーになるためには、信頼されるに相応しいリーダーでなければなりません。
◇ 信頼関係醸成のスタート
リーダーシップは、メンバーからの信頼関係がなければ活かされないという側面を持っています。その反面、リーダーシップを充分に発揮できますと、メンバーからの信頼関係が深まります。
メンバーからの信頼が得られれば、リーダーに対する尊敬の念も高まり、リーダーについてきてくれるようになります。
鶏と卵の関係のようですが、まずは、リーダーが、リーダーシップを発揮したマネジメント、すなわち「温かい管理」を通して、信頼関係を高めることから始めることです。
それに加えて、リーダーは部下やメンバーをまず、信頼して行くことです。
リーダーシップを発揮するために管理会計的発想から、部下やメンバーの進捗状況を確認しますが、その際に、細かい部分まで指示を出したり、口を挟みすぎたりしないことです。
いうまでもなく、くどく指示が出されたり、繰り返し進捗状況を尋ねたりしますと、相手は、「自分は信頼されていないのだ」という思いを持つでしょう。「自分は、それなりの経験があるのだから、もっと信頼して、任せてくれてもよいのでは・・・」という思いをすることもあり、逆に、彼等からリーダーへの信頼感も薄らいでしまいます。
相手を信頼して、一任するといいましても、相手次第のところもありますので、人により、対応を変える必要もあります。
たとえば、経験の浅い部下やメンバーであれば、作業・業務の具体的なやり方まで、手を取るようにして指導していかなければならないでしょう。私事になりますが、私は「お節介焼き経営コンサルタント」といわれるほど、困っている人を放置できません。そのためにやり過ぎてしまうという欠点を持っています。
経験もあり、業績も上がっている部下やメンバーであれば、最小限の確認や指示で充分です。いうまでもなく、放任しておくということではありません。リーダーとしてのスキルや資質は常に磨き上げ、それを駆使していかなければならないのです。
任せることにより、彼等が失敗する可能性も高いです。失敗したときに、その相手を叱責したり、責任をとらせるような言動をとったりすべきでないことはいうまでもありません。
再発を防ぐために、じっくりと話し合いながら、対応策を講じ、再発防止策を実施して行きます。経験の浅い人であれば励ますことも必要でしょう。「失敗は気づきの契機」ですし、再発防止の教科書でもあります。
一方、組織全体に関わるような大きな問題の場合には、会議や研修会のテーマとして取り上げ、部門全体で取り組みます。
◇ 公平性
特定の部下を贔屓したり、特別待遇をしたりすることは公平性の原則に反することは、だれもがわかっていることです。しかし、現実には、それが横行している企業があります。
「同一労働、同一賃金」ということが、さかんに叫ばれたことがあります。もし、言葉通りですと、新人もベテランも、同じ仕事をするのであれば、同じ賃金が支払われると言うことになってしまいます。
一見しますと、公平な考え方のように見えますが、能力というのは人により異なり、同じ時間長で処理できる作業量にもバラツキがあります。質におきましても差が出てきます。
「公平」という言葉の持つ意味に難しさがありますが、一見すると公平であるような考えを頭ごなしで信じ込まず、常にクリティカル・シンキング的発想で注意を払う必要があります。俯瞰的な見方をし、全体最適思考を考慮しますと、公平性のあり方に対する理解も深まります。
◇ 責任感
恒常的に約束を守れない人は信頼できません。その様な人は、リーダーとして相応しくないことはいうまでもありません。
組織には「三面等価の原則」というのがあります。リーダーや管理職には、一定の権限が与えられます。それは、一方的な権利と誤解してはなりません。任務という責任を果たすのに相応しい、すなわち権利と権限は「等価」なのです。これが、俗に言われます「権限と責任」の関係なのです。
権限や責任と同じレベルの重要性を持つのが「結果責任」です。権限と責任を行使するだけでは、リーダー・管理職の役割を果たしたといえません。権限・責任・結果責任が正三角形の関係であることを充分に認識しなければならないのです。
リーダー・管理職の役割として、結果を出すことが求められています。それを行使して、仕事をやりやすくするためにリーダーシップがあるのですから、部下やメンバーだけではなく、上司や関係者、そして自分自身に対してもリーダーシップを発揮する必要があるのです。
◇ リーダーシップを発揮する仕組み
これまで、リーダーシップを、人間としての資質や能力・スキルを中心にお話してきました。それを全て身に付けることも至難の業ですが、それが身についているとしても、なかなかリーダーシップを充分に発揮し、結果としてだすことは、われわれ凡人には難しいことです。
リーダーシップやマネジメントを効率よく行える「仕組み」がありますと、既述のことだけではやりきれないことを支援してくれます。これを「管理のための設備」と呼んでいます。
たとえば、営業パーソンに対してリーダーシップを発揮し、マネジメントをしていくのに「営業日報」は不可欠でしょう。その日報も、温かい管理ができる形式に変更しますと、日報というツールが「管理のための設備」に格上げされるのです。
手前味噌になりますが、管理のための設備につきましては、弊著「温かい管理のための管理会計の教科書(秀和システム刊)」に具体的な事例を付けて紹介していますので、そちらをご参照くださると幸いです。
|
|||||||||
|
|||||||||
↑ Page Top | |||||||||
ホームページ 経営マガジン 経営トップ・管理職 経営コンサルタントFAQ コンサルタントへの道 会社概要 お問い合わせ |
|||||||||
© copyrighit N. Imai All rights reserved |