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経営コンサルタント「グロマコン」は、
日本のコンサルティング・ファームの老舗として
1970年代から、中堅・中小企業から大企業まで
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してまいりました。
「経営は心で」を信念に
「あたりまえ経営」を標榜して
これからも、皆様と共に歩んでまいります。
 
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 あたりまえ経営のきょうか書

 20世紀後半から、ICTの技術革新が急速に変化するようになり、それに伴いニーズの高度化や多様化がますます大きくなり、経営環境は、「日進月歩」から「分進秒歩」の変化へ、さらには”光速化”へと、大きく変化してきています。

 このような経営環境の急速な変化の時代ですので、企業経営者は、過去の延長線上での発想では、企業を存続させ、発展させることは困難でしょう。

 昨今におけます経営環境が変化します度合いは、過去の成功体験や実績を活かすことが困難な時代に、質的変化を起こしています。企業は、その変化に対応しようと必死になって取り組みをしています。

 ところが、対応策を取り入れようとしても、企業が、時代に即した体質になりきれていません。高度な技術や経営手法を取り入れても、それを消化しきれませんで、体質強化どころか、精神的にまいってしまっています。

 最新の技術や経営手法を全面的にいきなり取り入れるのではなく、消化できるところから取り入れ、それと並行して、時代に即した企業体質を身につけるための「基礎体力強化」が吃緊の課題となっています。

 そのために、何をなすべきか、といいますと、まずは「あたり前のことが、あたり前にできる企業」に体質強化を図ることです。

 「あたりまえ経営のきょうか書」は、「時代即応企業創りを目指して企業体質”強化”する”教科書”」として、経営コンサルタント歴40年余の実体験から、そのノウハウをご紹介いたします。

 企業経営者や管理職だけではなく、経営コンサルタントや士業の先生方にも参考となると信じています。





 

“真”のプロが実践している発想法と行動術

あたりまえ経営のきょうか書


■ 1 経営トップは、このようにして変身せよ ■

1-4 経営者は自分自身を謙虚に見つめて熟知せよ


 
 
■1-40 【経営者分析】 考える経営者には信念がある
 
 別項で、「ビジネスパーソンは夢を語れ」ということをお話しています。経営者にも同じことがいえますので、それをもとに記述いたします。
 
 経営コンサルタントの業務の一つに、経営理念の構築・再構築という業務があります。
 
 しかし、多くの企業で、経営理念は作っても、作りっぱなしという状態ではないでしょうか。中には、立派な額縁に入れて、車内に掲示している企業もあります。あるいは、朝礼の場などを利用して、経営理念を唱和する企業もあります。
 
 残念ながら、なかなか社員に浸透し、それを日常活動に活かすまでに至っていません。
 
 経営者・管理職が、初心を語ったり、創業者精神を熱く語ったりということがあまりなされていません。それを通して、経営理念の徹底ができると心得、経営コンサルタントは、企業の経営者・管理職におけます活動の一環として「夢を語れる経営者作り」をしてはいかがでしょうか。
 
 
 さらに別項で、次のようなことをご紹介しました。その一部を挿入しておきます。
 
 ある企業の管理職は、二言目には「うちの社長は、こんなことを言っています」と、社長の自慢話をしてくれます。会うたびに、言う内容が異なりますので、その社長さんは、朝礼や訓示などで、自分の考えをいろいろと話をしているのでしょう。
 
 しかも、主旨一貫していることとして、創業者精神やそれに端を発すると思われる死生観といいますか、世界観といいますか、人生観ともいえる一本筋が通っているように、私には聞こえます。
 
 その根底には、彼が持つ変わらない価値観があるのでしょう。その価値観が、仕事に対する姿勢として表れているようです。
 
 
 社長やトップ陣には、「経営理念をベースにした口癖を持て」というアドバイスをします。経営理念を、そのままいうのではなく、経営理念に付帯した表現で、経営理念を連想できるような言葉を、自分の口癖言葉にするのです。
 
 また、経営理念実現のための、他社の事例や、本やマスコミから入手した、経営理念内容に関連するような情報を、社員に聴かせるのです。口癖言葉とは異なって、事例関係は、同じことを繰り返すのでは、効果がありません。常に新鮮な情報を取り入れて、管理職や社員に話をするのです。
 
 管理職は、「先日、社長が○○についてお話されていましたが・・・」というように、社長の話を、自分の切り口で咀嚼して話をするのです。勿論、管理職が言うことが、社長の意図とずれないことが肝要であることはいうまでもありません。
 
 管理職が、社長やトップ陣の話をすることにより、社員は次第に自社の社長等の考え方を理解すると共に、尊敬の念が芽生えてきます。その結果、社員が、取引先や顧客など外部の人と話をする時に、「うちの社長は、○○なのですよ」とか「うちの社長は、常々○○のようなことを話してくれます」というような話をするようになります。
 
 

1-41 【経営者分析】 経営者が自分自身を知ることに挑戦

 
 「誰しも、自分のことは自分が一番よくわかっている」と考えているでしょうし、そこまで行かなくても、「それに違いない」「そうありたい」「知っていなければならない」と思っているのではないのでしょうか。
 
 ところが、「岡目八目」という言葉がありますように、意外と自分自身を知っているようで、実は気がつかない面をたくさん持っているのです。
 
 人は、しばしば「自分の欠点を直したい」と願います。経営者・管理職やビジネスパーソンから、「自己改造はどのようにしたら良いのでしょうか」という質問を受けることがあります。
 
 一方で、社員研修では、自己紹介ならぬ「他己紹介」というテーマの研修を行うことがあります。また「あなたの長所、よいところは」というテーマで行うこともあります。
 
 その結果、大半の人が、「自分の気がつかなかったことに気づきを与えてもらえた」と、モチベーションを上げることが多いです。それと同時に、「人は、自分のことをよく見ているのですね」という感想も良く聞きます。
 
 
 NHKの「如何にしたらダイエットをすることができるか」という番組で、「わざわざ、ダイエットをしなくても、人は痩せることができます」とゲスト医師が公言しました。
 
 その医師によりますと、「ただ、体重の記録を毎日付けるだけ」と断言したのには、さらに驚きました。小数点以下第二位まで、すなわち10gまで正確に体重測定ができる体重計を用意し、それを、毎日記録し、折れ線グラフにするのだそうです。
 
 たった、これだけのことで、多くの人の体重が減ってきたといいます。
 
 体重の変化を見える化しただけの、この方法は、人間が持つ「改善欲」という見えない心理を利用しているのです。グラフをつけ始めますと、始めは半信半疑であっても、その変化が気になります。グラフが右肩上がりになり始めると、「なぜ、体重が増えてしまったのだろう」と考えるでしょう。
 
 間食が影響しているのではないか、カロリーの高い食品が多いのではないか、運動が少ないからではないだろうか、等々、自然と考えるようになり、それを改善していく方向に生活が変化してゆくのだそうです。
 
 欲望を抑えるようなダイエットをしても三日坊主で終わってしまう人が多いです。ところが、体重測定をし、グラフに記録するだけで、私達は、気がつかないうちに、そのグラフに操られてしまうようです。
 
 もちろん、中には、体重測定すら続けられない人もいるでしょうが、大半の方に効果が見られるとなりますと、やってみる価値がありそうです。
 
 
 経営者・管理職の皆さんとお話するときに、「上に立つ者が変わらなければ企業は変われない」というお話をします。しかし、多くの人が、「この年だから、いまさら自分を改造することなどできっこない」とおっしゃいます。
 
 「人は、器以上に大きくなれない」ということを良く聞きます。しかし、器が大きくなれば、人も大きくなれるのではないでしょうか。それなら、どのようにしたら器を大きくすることができるのかを考える姿勢が肝要です。
 
 「有言実行」で、上に立つ人が、「自分は変身する」と公言してしまうと、やらざるを得なくなります。
 
 私達は、自分の短所だけではなく、長所も知ることにより、生き方が変化して来ます。ただし、人により、変化の度合いが異なります。
 
 上述のように、自分が気がつかない面に気づき、長所はさらに伸ばし、短所はできる限り改善していこうという意識の強さが、その後の成長に大きく変化するのです。公言することにより、自然と自分が変化してゆくのです。
 
 
 

■1-42 【経営者分析】 経営者自身が自己分析をする
 

 別項でも述べましたとおり、経営理念や企業の理想像などは、経営者の夢を表現した、企業として、あるいは経営者としての生き方の問題でもあります。これを前提として、経営者自身の自己分析を、クリティカル・シンキングの手法を援用して行ってゆきます。
 
 自己分析をしますのに、分析項目を掲げて、それに基づいてゆくと分析しやすいでしょう。ここでは代表的な項目として、「人生観」、「社会観」、「企業観」の参考につきまして見て行きます。もちろん、それ以外でも、重要と考えられる項目がありましたら、追加してください。
 
 それぞねの項目におきまして経営者が持つている側面、あるいは実際に歩んできた道や体験、もともと持つている素質など、事実面を基準に見てみてゆきます。また、それぞれの中で、特別に他の人と異なったり、特徴的な面であったりすることを別項として分析します。
 
 
① 人生観
 
 経営者が、これまでの人生において、どのような道を歩んできたかにより、経営者としての人格形成への影響は異なります。幼少期、少年期を経て、青年期に入る時期となります社会人になるまでの、いわゆる「準備期」の分析は欠かせないでしょう。この頃の体験が経営者としての生き方に大きく影響するからです。
 
 社会に出てから、管理職や経営者になるまでの「社会人初期」では、ビジネスパーソンとして実力養成に影響が出ます。この時期の成功や失敗体験は、経営者となつてからの経営実務に活かしやすいのです。
 
 社会人初期以後は、経営判断力という面の重要が増してきます。この時期にどのような業務を、どのように体験したかや、顧客との接触や社員との交わりのあり方で、経営者としてやっていける素地が固まってきます。それにより、社会に対する見方も異なります。
 
 これらの諸要素に、ウェイト付け、そこから座右の銘といえるものが出てきます。いわゆる、好きな言葉であつたり、口癖といわれる言葉で、企業理念を表現したりするときに重要となります。
 
② 社会観
 
 これまで歩んできた人生の生き方を通して社会観は培われてきました。その経験と共に、現在やこれから社会との関わりをどのようにして行くのかを、細分化し、その項目ごとに見てゆきます。
 
 道徳心や遵法精神は、経営に大きく影響することがあります。多少あくどいことをしてでも企業を継続させようとするのと、反社会的なことはやつてはならないというのでは、企業経営に大きな違いが出てくるでしょう。
 
 それらも含めて価値観の違いというのも要素として欠かせません。
 
 金銭欲が高い人は、儲けという観点にウェイトが置かれます。社会的地位を求める人は、いろいろな団体の役職に就くことに情熱を傾け、社会的名声を得るばかりでなく政治にまで関心を持つ人がいます。中には、ひたすら企業規模を追求する人もいます。
 
 その視点の重点がどこにあるのかにより、経営理念は大きく異なってきます。経営理念には、経営者の生き方が滲み出てくるといえます。
 
 
③ 企業観
 
 人生観や社会観以上に、経営者の企業観というものが、経営理念構築に影響を与えるでしょう。
 
 社会人としてどの様に生きてきたのか、経営をこれまでどのようにしてきたのか、これからどうしていきたいのかは、如実に経営理念に反映されます。経営管理に対する考え方も、経営のあり方が行動に出てきますので、行動面や管理面、その結果、管理職の登用面を含む人事面でも考え方が滲み出てきます。
 
 経営方針の重点度に影響が出るという面では、営業重視なのか、技術重視なのか、その結果開発に対してはどう考えるのか、こねらも経営理念構築には欠かせない要素です。こねらは経営者の出身部門に因ることも大きいでしょう。
 
 営業畑一本できた経営者は、営業重視になることが多く、特にマーケテイングに造詣が深い人は、営業重視と共に新商品の開発重視という視点を持つことも多々あります。
 
 開発というのは、経営者の積極的な姿勢、将来に対する見方にも因るでしょう。
 
 総務や財務部門出身などの経営者の場合には、ものごとをきちんとしないと気が済まない人が多く、企業の規則などルールを重視したり、管理面の強化に固執したりしがちです。
 
 
 このようにして、経営者としての自己分析を行い、それをSWOT分析表に整理しますと、自分自身を客観的に見ることができるでしょう。
 
 
 
 
■1-43 【経営者分析】 経営者自身をSWOT分析してみる
 



 すでに経営者自身の分析について、ご紹介をしてきましたが、なにごとも分析のままでは、中途半端な人物像描写でしたありません。その分析をもとに、経営者自身が、どの様な人物で、自分の特質を活かしますと、今後どの様に人生設計をしたら良いのかを明確にすることができます。
 
 SWOT分析表というツールをビジネスパーソンであればご存知でしょう。これは「分析表」といわれますが、諸分析の集約・整理にも使えます。ここでは、これまでの分析結果の集約をSWOT分析表に整理し、自分自身が、どの様な人物なのか、鏡を見て、絵に描くように、SWOT分析表を鏡として、自画像を描こうという手法です。
 
 SWOT分析表は、4つのセルに分かれていて、各セルに名前がついています。その頭文字がSWOTですので、SWOT分析表と呼ばれることは周知の通りです。自己分析という視点ではありますが、ここでも、一般的なSWOT分析表の使い方は同じと考えてください。
 
 SおよびWは、自分自身のことについての強みや弱点、OおよびTは、自分自身では、コントロールできないような外部要因が分析対象となります。
 
S:strength 強み
 
 自分自身の長所というのは、意外と気がついていないのです。自信があること、他の人と比べて平均以上であること、好きなこと、やってみたいこと、過去に誉められたこと等々を列挙します。
 
 自分一人では、なかなか出てこない場合には、別項でも紹介していますが、「他己紹介」とか「長所探し」というような人事研修手法を仲間と共に行うとよいでしょう。
 
W:weakness 弱点
 
 欠点のない人はいません。謙虚に自分の欠点を列挙してみてください。それに加えまして、自分が苦手と思っていることなど、思いつくままに、一人ブレインストーミングをやってみて下さい。
 
 過去に複数回失敗したり、大きな恥をかいたりしたことから弱点といわれることの中で、自分自身が弱点と思うような項目があれば、それも追加します。
 
O:opportunity 機会
 
 機会というのは、外部環境の中で、自分にメリットがあったり、その条件を活かして時流に乗ったり、自分がやりたいことを連想して、それを活かせたりするような環境や条件を考えたりします。
 
T:threat 脅威
 
 脅威というのは、機会の逆で、自分が生きていくことに対して、足かせになるようなことを記述します。
 
 自分がしたいことややろうとしていることにとって、阻害要因・ディメリットとなるような事項が対象となります。
 
 
 以上は、一般的なSWOT分析表と何ら変わりはありません。
 
 

■1-44 【経営者分析】 経営者自身が「自分とは」という人物像を描く
 



 経営者自身の自己分析にSWOT分析表を利用する方法を別項でご紹介しています。
 
 SWOT分析表は、処々で使われていますが、分析した後、それをいかに活用するのかが問題で、SWOT分析表を活用し切れていない人も多いようです。
 
 活用法が中途半端な分析で終わりにしないためには、「9セルSWOT分析表」として利用することをおすすめします。
 
 図のように、内部環境分析の下に「C:character 特質」、外部環境分析の下に「A:action  対処」というセルを付加します。また、プラス面でありますSセルおよびOセルの右に、「E:expansion 伸張」をマイナス面のWとTの右に、「I:incubation 克服」というセルを追加します。
 
 右下の空欄に「M:myself 集約・戦略」というセルを追加し、ここにSWOT分析の結果を集約します。
 
C:character 特質
 
 ここでの「特質」とは、分析者自身の①「強味(S)」と②「弱味(W)」から浮かび上がってきます、分析者の特徴を文章、または箇条書きで記述します。
 
 この分析の目的が「経営者の自己分析」ですので、後ほど行う作業がスムーズに進むような記述がよろしいでしょう。
 
A:action  対処
 
 外部環境とは、個人としては動かしようのない、外的要因です、③「機会(O)」と④「脅威(T)」の集約となります。
 
 時代背景、経営環境という観点での捉え方をします。
 
E:expansion 伸張
 
 経営者が、経営を行う上で、追い風となる③「機会(O)」を、自分の長所であります①「強味(S)」をいかに活かすかという観点で、「伸張(E)」を記述します。
 
 これからの飛躍の原動力になる力の源泉となるとよいですね。
 
I:incubation 克服
 
 「克服(I)」欄は、経営者が抱える②「弱味(W)」や④「脅威(T)」にたいして、いかにして対峙し、克服していくかを記述します。
 
 incubationには、克服という意味はありません。「育てる」とか「産み出す」というような意味合いですので、それを勘案して検討して下さい。
 
M:myself 集約・戦略
 
 Mは、自分自身の人物像という意味として、myselfの頭文字から命名されています。また、「対処」という意味であります「counter measures」のMでもあります。それを「戦略」という意味の「strategy」という言葉の代わりに用いています。
 
 自分自身の人物像という観点で集約したり、今後、どの様に生きていくべきかという観点で自分の考えを整理したりします。
 
 
 たかが自己分析のために、この様に時間をかけるのは、時間の浪費でしかない、というご意見を良く聞きます。確かに時間はかかりますが、その過程で、いろいろなことを考えたり、自分の中に潜むものを引き出したりすることができて、新しい発見があります。
 
 私達は、日常業務の忙しさにかまけて、自分の考えを整理する時間を持たなくなってしまっているような気がします。
 
 私事で恐縮ですが、毎年正月に、自分自身を見直し、その年をいかに生きるかを考えるようにしています。
 
 

■1-45 【経営者分析】 自社の現状をどれだけ知っているか
 
 私達経営コンサルタントは、企業を初めて訪問する前に、事前調査をしていますが、それは、望遠鏡で月を見るようなものです。コンサルティングをするには、やはり現地に行き、ボーリングをしたり、環境調査をしたりしてはじめて、月というのはどういうものかがわかってくるのです。
 
 実際に、現地に行って見ますと、想像とはかけ離れていたり、想定通りであったりと種々様々です。そこで、企業を訪問した際に、社長さんを始め、その企業のキーパーソンから「ヒアリング」ということを行います。
 
 ところが、経営者・管理職が言うことに食い違いが結構あります。自社の実態を知っているようで、ご存じなかったり、事実の認識に違いがあったりします。ですから、この機会に、自社の現状を、見直していただきたいのです。
 
 
 一般的に、キチンとした管理をしている企業というのは、月次決算が定まった日までに毎月キチンと出来上がっています。最近の財務管理システムは、単に月次決算をするだけではなく、月次やその累計の財務分析までができるようになっています。
 
 ですから、経営者・管理職の皆さんにその意識があれば、自社の現状や変化を月単位で時系列的に知ることができるはずです。ところが、その資料が出力されることがわかっていますので、「いつでも見られる」という思いからか、何もなければ見ようとしません。ちょうど、東京に住んでいる人が、スカイツリーに昇ったことがないという人が多いのと、同じようなことです。
 
 
 では、経営者・管理職の皆さんには、どのような視点で、自社の現状把握をして欲しいのかを整理してみたいと思います。
 
 まず、自社が成長傾向にあるのか、売上高や利益の増加は顕著とはいえないまでも安定的な状態であるのか、下降傾向にあるのかという、大局的なものの見方をして下さい。
 
 また、外部の企業に自社をどの様に見ているのか、それが自分達の認識と一致しているのか、もし、一致していないのでしたら、なぜなのかをしることも、自社の見方に対する気づきになるでしょう。
 
 金融機関などは、財務状態は当然ですが、「信用」という視点で企業や経営者をみます。そのチェックポイントの一つが、経営者が経営理念や経営計画について、社員とコミュニケーションを充分にとっているのか、年度計画立案に社員に参画意識を持たせるようなやり方をしているのかなどを気にします。
 
 営業面においても、自社の営業力は、業界の中でどの程度のレベルなのか、売上高の量的な面だけではなく、利益率や成長率など質的な面での把握も重要です。業界のライバル状況も重要で、自社は、業界でリーダー的な存在なのか、二番手なのか、フォロワーなのか、それともワン・ノブ・ゼムなのかを知っておきませんと、どの様な戦略をとるべきかも見えません。
 
 また、経営品質といって、企業の健全性や安定性、成長性などを改善するような管理施策を打っているかどうかもチェックポイントとして重要です。
 
 たとえば、「うちでは提案制度を取り入れています」と提案書投入箱を見せられることがあります。しかし、それに関する規定・規約もなければ、最近の提案で採用したこととしてどの様なテーマがあったかを聞いても、何か月も、何年も、何もない企業もあります。
 
 何かをやろうとしたら、結論が出るまでは、継続してゆく意識や行動力がありませんと、いくら経営コンサルタントが入って、アドバイスをしても企業体質や業績は改善しません。「継続は力なり」という言葉を見直して欲しいです。
 
 経営者・管理職が、自社を見直す契機となるように、人間ドックならぬ、企業の健康診断を定期的に受け必要があります。月次決算の結果について、税理士の先生からコメントをきくだけではなく、企業全体を俯瞰的に見る経営コンサルタントの先生にも見てもらうことをおすすめします。
 
 
 

■1-46 【経営者分析】 経営者としての経営管理への取り組み姿勢
 
 問題を抱えていない企業はない
 この言葉もしばしば聞きますし、当シリーズでも何度か用いています。
 
 ところが、意外と多くの経営者が、表層的にしか自社の現状を捉えていないような気がします。一方で、自社の問題点をわかっているけど、どのように対処したらよいのかで困っている経営者もいます。
 
 顕在的な問題だけではなく、潜在的な問題までを自社内で把握することは大変なことです。社内にはびこる、人間関係や慣習など、オリのようものが疎外していて、問題を解決できないでいる企業もあります。
 
 中には、自社の問題点もその解決方法もわかっていながら、社内の人材不足や、日常業務に追われ、そちらまで手を回せないでいる企業もあります。
 
 私は、経営コンサルタントとして、初めての企業の経営者とお話するときには、「御社の強味は何ですか?」という質問を投げかけ、そのやりとりの後、「大変失礼ながら、御社が抱えている問題点とは、どのようなものですか?」と問います。
 
 多くの経営者が、スラスラとは回答してきません。ここで、私達経営コンサルタントが知りたいのは、トップの問題発見・課題解決意識のレベルを知りたいのです。
 
 経営理念などを確認すると共に、多くの中小企業が、後継者難で困っていますので、後継者育成に対して、どの様な取り組みをしてきているのか、具体的な候補者は決まっているのか、引き継ぎの計画はどの様になっているのか、これらを確認します。
 
 管理の室を感じ取るために、職務権限に関する規定ややり方も、経営者のレベルを確認するためには必要です。
 
 ものさし主義が、どの程度理解され、どのように進められているのかも企業の経営品質を知る上では大切なことです。ものさし主義が理解されている企業では、「例外処理」に対する管理職の権限についても確認します。「管理職とは、規則を破ることができる人」というお話をして、その真の意味を理解できるかどうかで、その企業の管理のレベルもわかります。
 
 それに関連して、規定類を見させていただき、なぜその規定が必要なのか、現状と共にその規定ができた経緯についても、キチンとした回答が返ってくるのかどうかも重要な質問の一つです。
 
 
 「経営は数字である」という面源があります。ところが、別項でも触れていますが、計数意識の低い、どんぶり勘定の経営者もいます。
 
 資金繰表の利用度合いは、経営者の計数意識を測定するのに大変有効です。売上高や利益だけではなく、代金回収の状況や支払手形の割引状況など、資金繰りの余裕度測定もさせていただきます。
 
 それと共に、経営計画への関与度や活用度も、その経営者の姿勢やレベルを知ることができます。役員会などを覗かせてもらい、そこではどの様なテーマが、どの様に話し合われているのかを知りますと、役員さん達のレベルを知ることができます。
 
 経営コンサルタントとしては、役員会の開催頻度や議題のレベル・質を知ることも重要です。裏を返しますと、経営計画の進捗状況は、経営者の経営姿勢を見るのに大変便利な方法なのです。
 
 また、経営者が、社員研修ととおに、社員との接触をどのようにしているのかも重要です。時々、予告なしに部門会議を除いたり、社員とパーソナルな会話の機械を意識的に作ったりして、社員からの評価を高めている人もいます。
 
 
 他の項目とも重複する事項もありますが、攻めの営業も、守りの管理面も経営者にとっては重要です。
 
 
 

■1-47 【経営者分析】 自社商品・サービスをどれだけ知っているか
 

 自社の商品が、どの様な商品で、どの様な市場に販売されていて、どの様に使われ、顧客が、どの程度満足しているのか、商品の概要と共に、顧客像をイメージできなければなりません。
 
 また、それらの総売上高における商品構成がどの様になっているのか、大まかでよいですから、金額だけではなく、数量ベースでも概要を把握しておくべきです。
 
 また、売れ筋商品が何であって、それが全体に占める割合はいかほどであるのか、なぜ売れているのか、ライバル企業としてどの様な会社があるのか、自社商品の特徴とライバル企業のそれとはどの様な差異があるのかが、時系列できわかるようにしておくべきです。
 
 また、ライフサイクルのポジションがどこにあり、これからどの程度現状が続くのか、伸張するのか、悪い方向に進むことはないのかを知っていませんと、気がついたら企業としてのライフサイクルも衰退期に入っていた等というようなことがないようにしなければなりません。
 
 市場のニーズは多様化しています。スピーティな対応が求められます。
 
 改良の可能性があるのか、そのスケジュールや進捗状況はどうなっているのか、新商品開発の計画についても状況把握をしておかなければなりません。改良や開発のマンパワーは充分なのか、開発や技術のレベルは業界の中で高いのか低いのか、開発や計測の設備に問題はないのか、そこに投入されている資金は充分なのか、改良・開発プロジェクト間のバランスは、商品戦略に則っているのか、経営資源面からのチェックも必要です。
 
 製造原価がらみの数値も時系列に見ることができるようになっている必要があります。原材料費率、人件費・労務費率、製造経費・原価率、減価償却費率、外注費率や、それに付帯する販売費率、利子割引率なども関連ある指標もわかるようになっていなければなりません。
 
 納品後のアフターフォローも重要です。保守体制が万全なのか、またその費用は増加傾向にないかというのは、現状把握や経費面でも問題ないのか、顧客の満足度はどうか、リピートオーダーに繋げるためにも重要です。
 
 人材の流動化が、以前に増して激しくなっています。他社からの引き抜きなどで、人材の流出からの影響も考慮に入れ、従業員の動向に注意が必要です。
 
 一方で、中小企業では従業員の平均年齢が高くなる傾向があります。平均年齢だけではなく、部門別の平均年齢の変化にも注意が必要です。
 
 たとえば、アフターサービスというのは、高度な技術が求められることがあります。現有人材の平均年齢が高いですと、何年か後には、その人の定年退職という問題もからみます。機械の寿命だけではなく、商品のライフサイクル、従業員の年齢的な寿命等と共に常に意識していることが必要です。
 
 経営資源全般に関わりますライフサイクルは、技術力や水準、品質管理など、広く影響が及びます。技術変化から、技術の陳腐化という視点も、商品のライフサイクル以外の要素からも重要です。
 
 

■1-48 【経営者分析】 ステークホルダーに対する関心度
 

 ステークホルダー、すなわち企業の関係者といいましてもいろいろとあります。そのステークホルダーに対する重要度は、企業の経営理念や経営戦略などにより異なります。その様な状態の中で、最重視している企業が多いのが顧客でしょう。
 
 アメリカ的経営の発想では、株主を重視しますが、大手企業などの資本が入っている企業は別として、一般の中小企業では、同族経営や経営者と関係深い人、社員が株主であることも多く、ここでは省略させていただきます。
 
 顧客につきましては、すでに簡単ではありますが触れていますし、営業管理編で詳細に触れる予定でいます。ただ、直販一本の場合には、売上がある程度安定しますが、売上高の大幅な増加は望めません。代理店経由の場合には、代理店との関係の強さ、信頼度などの関係から経営者としても接触をとる必要があります。
 
 代理店の育成などの計画や、そのプログラムがどの様になっているのか、経営者として指示・命令を出す必要がないほど、充分なのかも判断できるようにしなければなりません。
 
 「利は元にあり」といいますように、経営者として、顧客と共に重視しなければならないのが、仕入れ先でしょう。仕入れ先の状況についてどの程度の知識や情報をお持ちかは、今後の商品戦略面からも重要です。
 
 下請け企業などでは、原材料や部品を支給される場合もありますので、自社調達との比率がどの程度あるのか、それが、仕入原価率にどの程度影響が出ているのかを把握していなければなりません。
 
 仕入の方法も計画発注ができる状態なのか、その比率を高めたり、大量仕入をしたりして原価率を下げることはできないか、逆に、大量発注によるロスは出ていないのか、売上総利益率との関係で、経営者は状況把握をしておくべきです。
 
 仕入れ先との信頼関係ができていませんと、経営環境の急変時に仕入が途絶えてしまうというリスクがあります。信頼関係を一部の社員に任せきりですと、その社員が転職したり、引き抜きにあったり、何か想定外のことが発生したりして、自社での業務を継続できなくなるリスクもあります。その様なことがないように平素から対処しておくと共に、経営者同士の信頼関係も強固にしておく必要があります。
 
 
 自社の関係者というのは、意外なところにもいらっしゃいます。
 
 某中小企業は、産業用の計測器のメーカーです。自社にサービス部門を持ち、アフターサービスの良さでも知られ、根強い顧客層を持っています。
 
 しかし、中小企業であるために、納入した機器の細かい操作や、そのデータの活用法の支援まで手が届きません。それを補うために、定期的に技術講習会を開いています。
 
 その講習会を受講したある技術士の先生が、ご自身の業務の中に計測機器の高度な活用法のコンサルティングを始めました。
 
 上記のメーカーは、この先生に、その様や業務を委託したわけではありませんが、この先生もステークホルダーの一人といえます。
 
 この様に、ステークホルダーというのは、見えないところにも存在します。これからの企業というのは、ステークホルダーズ・サティスファクション(SS)にまで配慮をしていく時代でのありかたも考えるべきではないでしょうか。
 
 
 

■1-49 【経営者分析】 経営者自身の自己啓発
 

 「企業は、経営者の器で決まる」といいます。器が大きいというのは、人間的なスケールの大きさを表現したものでしょうが、その一つが知的な雰囲気といえます。
 
 逆に、知性が前面にですぎますと、嫌味にもなってしまいます。
 
 「知と情」という言葉がありますように、知性と「情け」がバランス良く備わっていることが、人間としての大きさを感じさせてくれるのかもしれません。
 
 企業経営というのは、経営理念実現という「目標」を明確にすることが前提です。人生もまた、「自分の人生をどの様に生きるか」という目標を持つことが、人間性形成に繋がるのではないでしょうか。
 
 そのために、経営者・管理職といえども、「自己啓発」「自己研鑽」は不可欠です。有名な匠が、「終生修行です」というようなことをおっしゃいますが、その言葉を謙虚に受けとめたいと思います。
 
 
 経営コンサルタントという立場からしますと、【心 de 経営】を、管理会計を取り入れて、論理思考をしながら自分を育てて行って欲しいと願います。
 
 管理会計は、市販書をたくさん買い込んでも、実務に活かすことは困難でしょう。なぜなら、市販書の大半が、アカデミックなアプローチを中心に既述していますので、頭の訓練や知的欲求を満たすということには繋がりますが、本を読んだからといって、実務に使おうと思っても、なかなかうまく行きません。
 
 財務会計を専門としている先生の著書は、管理会計とは何かを理解するのは適しています。しかし、経営コンサルタントなど、管理会計の現場で支援されている先生が、実務に直結した視点で書いた”良書”を見つけ出すことをおすすめします。
 
 
 管理会計を活用しますと、社内でのコミュニケーションの質が高まり、実践的になります。そのコミュニケーションの効果を上げるためには、論理思考が身についていることが必要です。
 
 論理思考というのは、持って生まれた人もいますが、大半の人は、訓練により、後天的に身に付けることで、論理思考ができるようになります。
 
 論理思考を身に付けるには、ロジカル・シンキングを利用することをお勧めします。管理会計の仕組みをロジカル・シンキング的な発想で創りあげ、ロジカル・シンキング・ツールを使いながら、実務をこなします。
 
 実は、その実践が論理思考を訓練することにも繋がり、わざわざロジカル・シンキングを、時間をかけて、改めて勉強するという、トレーニングにつきものな重圧感なしに、論理思考が身につくのです。
 
 それには、上述のように、管理会計の仕組みがロジカル・シンキングをベースにしていることが肝要です。上述の実務に適した書籍で管理会計を学ぶと書きましたが、ロジカル・シンキングがベースになっている管理会計の実務書が、それに相当します。
 
 しかし、残念ながら、この条件を満たす書籍は、それほど多くありません。セミナーなどを受講して身に付けようと考えても、この条件に即したセミナーが少ないのが現実です。
 
 
 【心 de 経営】の「心 of 経営=経営の心」というのは、上述の方法が一例です。
 
 「心で経営」、すなわち人間性を重視した経営というのも、上述の「管理会計+ロジカル・シンキング」を「温かい管理」を用いて運用することにより、身に付けることができます。
 
 
 私は、「重考高盛」ということを「ものさし思考」と共に実践するようにしています。
 
 「重考」というのは、「重い」の「重」ではなく、「重ねる」の「重」なのです。すなわち、「重考高盛」というのは、「考えを重ねる(繰り返す)ことにより、高く盛り上げることができる」という意味になります。
 
 スピードの時代ですので、即決することが求められます。一方で、自己研鑽という視点では、時間をかけませんと、なかなかホンモノの実力として身に付けることは難しいです。
 
 「重考高盛」というのは、「一つのテーマを、時間の間隔を開けたり、環境を変えたりして、繰り返し考えることにより、そこから生まれる果実は、高く盛り上がるほど豊かな物になる」ということです。
 
 私は、「重考」をものさし主義で思考するようにしています。そのときに、その最上位概念として「人間性」という「ものさし」を当てるようにしています。この繰り返しが、「心で経営」に通じるのです。
 
 
 「自己啓発」、「自己研鑽」というのは、一朝一夕にしては成せません。時間がかかるという前提で、自分のテーマを持ちましょう。
 
 その手法としては、ビジネスパーソン・ドックとかクリティカル・シンキング法などがありますので、それを体得することも必要ですね。
 
 

 
 
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